「手紙」

written by じょう


 この手紙はもしかしたら
 貴方を不幸のどん底に 突き落とすかもしれない
 この便箋には
 貴方を抉る言葉が 書き連ねてあるかもしれない
 僕の中に 封をされて 一枚の封筒が横たわる

 あの時の涙は自衛のために牙を剥くだろう
 あの時の痛みは復讐のために微笑むだろう
 唯君を呼び続けていた 純化され幸福だった言葉達
 届く事など必要なかった だからこそ伝わっていた
 彼らが死んだ後 残ったのは研ぎ澄まされたナイフ
 長年磨り減らされて 僕の手の中にしんと収まる
 僅かな凶器をなめてはいけない
 ましてこの刃には鞘が無い

 無言と苦笑と それが君の答えだった
 それしかなかった もうどうしようもなかった
 この手紙は生きている
 「もし 明日死ぬと宣告されたら 君に逢いに行くよ」
 生きたナイフと背中合わせに そんなつぶやきが歩いて行く
 いつか心臓が 潤んだ涙に
 沈む手紙を もう誰も(君とても)起こしたもうな

 あの手紙は 出しますまい
 あれは行き場の無い言葉達ではなく
 そんな彼らの 墓場に過ぎぬ


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