「むべ山風を」

written by じょう


 嵐が好きだと言った人の
 ソファに埋もれた白い貌 顎のライン 閉じた眼差し
 僕は貴方を振り仰ぐ 貴方の過去に
 彼女へと道を決めさせたのは こういう瞬間ですか それとも
 
 僕は昔の目になって もう一度この部屋を見渡そうか
 そうしたら今のあのひとは どんな顔で泣いているんだろう
 まだスフィンクスだった頃の僕
 問い掛けだけで生きていた僕
 こまっしゃくれた非力な僕
 
 あの頃世界はぐらぐらと不安定だった

 「むべ山風を 嵐といふらむ」
 解ったように 知ったかぶって
 すすきをかかげて 歩いている僕
 調子っ外れに 声を張り上げ
 「嵐来い来い 独りで来い
  蛇の目跳ね上げ お通りだい」



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