「幻の夏」

written by 沙門


幻の夏を
僕は自転車で駆け下りた
カゴの中には盗まれた氷がビシャビシャになって
滑稽だった!!
この小さな泥棒の犯行経路には
水溜まりがすでに追いついてしまっていて
さらに頂戴してきたこのオンボロ
ブレーキ完全にイカしてんだから!

急カーブをアクロバット騎手ヨロシク三度切り抜けた四度目!!!
手を振り、歓声を寄せる子供達を気取り
投げKissした瞬間、僕と盗まれた氷は七秒間宙を舞い
金持ちの庭のプールに奇跡の3回転半の着水を見事に成功させるのだった

家主の老婆の感涙と拍手を受け
お祝いの絹のタオルをマントにした僕は
氷の欠片を頬張りながら敬礼を忘れずに
在らぬ方角に走り去った




feelings of master

灼熱の轍
つはものどもがゆめのあと
入道雲へ飛び立った蒼穹の騎士

力の限りと形容するにふさわしい
自分の影すらひきはなさんとする右足と
その足先を追い抜かし続ける左足の勇姿

君よ どこまでも 夏であれ
   終わらない 夏であれ


戻る