里親制度Q&A

 里親に制度について関心を持った際、気になると思われる点についてもう少し詳しい内容をQ&A形式でまとめました。

(※ご注意)
 内容については管理人が今までに得た知識によってまとめたものですので、  若干正確さを欠くところがあるかもしれません。
 詳細についてはお近くの児童相談所や市町村役場の福祉担当課へ確認されるほうが確実かと思います。
 明らかに間違っているところがあったり、こんなことが知りたいということがありましたらメールでお知らせくださると幸いです。



STEP1具体的な行動の前に
STEP2申請から認定まで

STEP3里親になった後


STEP1具体的な行動の前に

●里親・里子って日本にどのくらいいるの?

 平成27年3月31日時点の統計で登録されている里親数は9949(世帯)、里子を育てている里親数は3644(世帯)、里子として里親のもとで育てられている児童数は4731人です。里親ファミリーホーム(小規模居住型児童養育事業)で暮らしている児童は1172人です。

平成26年度末の里親数・委託児童数

登録里親数児童受託里親数委託児童数
里親全体994936444731
うち養育里親789329053599
うち親族里親485471702
うち専門里親676174206
うち養親希望里親3072222224
(複数の種類の里親登録をしている世帯があるため内訳の計が全体数を超えます)

平成26年度末の里親委託児童数内訳(里子の年齢別、男女別の人数)
総 数 0歳1〜6歳7〜12歳13〜15歳16歳以上
総 数4,7311471,2711,470940903
 男 2,38474654775456425
 女 2,34773617695484478

平成26年度末に里親ファミリーホームに委託されている児童数及び内訳(年齢別、男女別の人数)
総 数 0歳1〜6歳7〜12歳13〜15歳16歳以上
総 数1,17215242386270259
 男 6269132206167112
 女 5496110180103147
(参考資料:厚生労働省 福祉行政報告例)

●児童相談所ってどんなところなの?

 その名のとおり、児童(0〜18才未満)に関する相談を受け付けるところです。 相談を受けたことについて児童本人や保護者、家庭に対して指導や援助を行います。 児童虐待への対応として、虐待が疑われる児童についての調査、一時保護、親への指導などに力を入れています。
 里親に関連する業務としては、家庭で生活することができない児童についての相談があった際に児童相談所から養育を委託する先 となることから、里親との連絡調整、里子に関する様々事項への対応、里親への養育上の支援などを行います。
里親の認定申請は児童相談所を設置している自治体の長(知事、市長)へ行うことになっており、その受付窓口になっています。

●児童相談所ってどこにあるの?

 都道府県と政令指定都市には必ず1箇所以上あります。中核市でも設置することが可能であり金沢市、横須賀市が開設しています。 設置している自治体の公式ホームページに所在地と連絡先が掲載されているはずです。

●児童相談所のほかに相談をする窓口はないの?

 市町村役場や都道府県の福祉関係部署でも里親に関する問い合わせや相談の窓口を設けているところがありますのでまずは問い合わせてみるといいでしょう。 そこが窓口になっていない場合は最寄の問い合わせ先を教えてくれるはずです。
 また、公的な機関以外(NPOや任意団体など)でも里親制度に関する活動をしているところもありますのでそちらに相談する方法もあります。

●児童相談所は里親をどんなふうにとらえているの?

 「家庭で生活できない児童に適切な生活環境を提供してくれる存在」と考えているのではないでしょうか。
児童が一般の家庭生活に近い環境で生活することの必要性が求められており、 家庭で生活できない児童の全体人数のうち、里親委託を行う人数の割合の数値目標として平成15年度現在の水準である8%から 15%への増加が掲げられていることから里親制度を積極的に運用し、里親を支援していく考えであると思われます。


STEP2申請から認定まで

●申請じゃなくてまず話を聞きたいって段階なんだけどそれでもいいの?

 全ての人が里親に関する知識を十分に持っているということはないのですし、里親制度の周知も児童相談所の業務の1つと言えるでしょうから 里親制度について詳しく聞きたいということでも問題ないかと思います。
ただし、児童相談所は多忙なようなので飛び込みで行って「今はちょっと対応できません」となるかもしれません。 まずは電話で問い合わせ、ゆっくり話を聞ける日時の予約をするのがよいかもしれません。

●まだ家族(夫・妻・両親、子ども等)には里親になりたいと言っていないんだけどそれでもいいの?

 家族に話すにしても、詳しい話を児童相談所に聞いてからでないと話をしにくいということもあるでしょうから、 申請について考えるために話を聞きたいということでもよいと思います。 資料やパンフレットなどをもらってそれをもとに家族で考えるのもいいでしょう。

●申請をするときにあらかじめ里子について「女の子がいい、男の子がいい」「3歳以下の子がいい」などの希望を出せるの?

 児童相談所としては制度の性質上「どんな子でもどんとこい」という里親さんのほうが嬉しいのかもしれませんが、 実際に子育てをしていくにあたっては里親さんのいろいろな事情(年齢的に乳児は大変、子育てが初めてなのでいきなり思春期の年代だと不安など) もあるでしょうから、里親さんにとって無理のない里子の条件をある程度絞り込むことも必要ではないかと思います。 申請の前に児童相談所の担当者の方とよく話し合ってみるといいでしょう。
ただ、条件を限定しすぎるとなかなか条件にあった里子さんがいなくて里子を受け入れるチャンスが少なくなる可能性もあります。

●申請をしに行ったらどんな対応になるの?

 児童相談所によって異なるかと思われますが、 まずは里親制度についての説明があり、あなたの申し出が里親制度の目的にかなったものであるか (跡継ぎがほしいから、自分の老後をみてくれる子がほしい などはふさわしくないでしょう) の聞き取りが行われるかと思います。
併せて里親として里子を養育するということについてあなたの家庭が対応できるか、 あなたの里親制度に関するイメージが現実とかけ離れていないかなどの現実的な面についても 質問があるかもしれません。

※場合によっては申請について再考してはどうかと勧められるかもしれません。 これは申請を行う前の事前審査というわけではなく、申請自体はあなたの意思で行ってよいものだとは思います。 しかし、申請後の調査は個人情報を多く提供することにもなりますし、時間もかかるものですので、申請をしても認定につながらない 可能性のある場合については児童相談所としても双方の負担を考えて敬遠するのかもしれません。

上記の説明の後、申請に必要な書類の説明があり、それを提出することで申請となると思われます。

●申請をしに行く際の準備は何か必要?

 児童相談所によって異なるかと思われますが、まずは何も持たずに出向いて必要書類等の説明を聞いた後、 その場で書ける書類ばかりではないでしょうから一旦持ち帰って記入して申請ということになるかと思います。
ただ、上記のような質問があると想定し、 「なぜ里親になりたいと考えるのか」 「実際に里親となった後の生活をどのようにイメージしているのか」 「家族の意見はまとまっているのか」 などについて説明できるようにしておくとよいかもしれません。

●申請をした後の調査ってどんなふうに行われるの?

 児童相談所によって異なるかと思われますが、児童相談所の職員が自宅を訪問してあなたを含めた家族に里子を受け入れることについて質問をしたり、 書類だけではわからない実際の物理的な受け入れ環境(家屋内の部屋数や設備等)や、周辺の環境(幼稚園や学校、病院までの距離、地域性)などについて 里親として認定するのに支障がないか詳しく調べることになると思われます。
 特に里子の養育についてどんな思いでいるのか、どのような子ども観や子育て観を持っているかなどは里子との相性の問題や委託後の児童相談所による援助の方針などにも係わることですので、忌憚なく伝えることが望ましいと思われます。

●申請しても認定されないこともあるの?

 里親の認定基準は法律上は、里親の認定等に関する省令(平成十四年九月五日厚生労働省令第115号)により 養育里親は、次に掲げる要件に該当する者とすると定められています。

一  心身ともに健全であること。
二  児童の養育についての理解及び熱意並びに児童に対する豊かな愛情を有していること。
三  経済的に困窮していないこと。
四  児童の養育に関し虐待等の問題がないと認められること。
五  法及び児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成十一年法律第52号)の規定により、罰金以上の刑に処せられたことがないこと。

 この基準に基づいて児童相談所を設置している自治体の「社会福祉審議会(児童福祉審議会等の名称のところもある)」が認定の可否を判断します(細かい部分の解釈については地域ごとに差があるかもしれません)のでこれに明らかに反する場合は認定がされないと思われます。 一見したところ、年齢や世帯構成、家屋の状態などの明確な基準はないようですが、具体的な条件については児童相談所に問い合わせてみるのがいいと思われます。 東京都など、基準を公開しているところもあるようです。
 平成21年4月からこれに加え、養育里親研修の修了が新たな要件として加えられました。認定の申請の後、研修を受講することになります。

●里親の認定基準の「一  心身ともに健全であること。」ってどこで「健全・不健全」の線引きがされるの?障害があると里親にはなれないの?

 東京都里親認定基準の【注釈1】に
「心身ともに健全であること」とは、児童の養育に必要な「健全」さであり、障害や疾病を有していても、児童の養育に差支えがなければ、この要件を満たす。
とあります。日常生活や児童の養育に心身の面で大きな支障がなければ問題ないのではと思います。
 また、手足・視覚・聴覚などに障害を抱えた方が里親として児童の養育をされている例を実際にいくつか存じていますので、障害があることで里親になれないということはないでしょう。養育に支障があるか否かをどう判断するかは各々の児童相談所や社会福祉審議会(児童福祉審議会)によって異なるかと思われますのでに具体的に相談してみてはいかがでしょうか。

●夫婦がそろっていないと里親にはなれないの?

 基準にはそのようなことは記載されていませんのでそれだけで不適格ということにはならないでしょう。しかし実際の運用では夫婦がそろっていない場合には児童の養育に支障がないよう、
「児童の養育経験があること」「保育士や保健師、看護士等の資格を有していること」(児童の養育・発達などについての知識や経験があること)
「里親希望者を補助する者として、子どもの養育に関わることができる20歳以上の子又は父母等が同居していること」(里親希望者の突発的事情・病気・事故等に対応できること)
が条件として加わることがあるようです。

●一度認定を受ければその認定はずっと有効なの?

 養育里親の認定を受けると養育里親名簿に登録されます、その登録の有効期間は5年となっていますので5年を経過するまでに更新研修を受け、認定要件について改めて確認を受けた上で再度名簿に登録されることになります。


STEP3里親になった後

●養育の仕方などについて児童相談所による研修などはあるの?

 児童相談所によって様々なようですが、認定されたときや里子を初めて受け入れるときなどに座学・実習などで研修を実施している模様です。また、専門里親の認定を受ける際はそれとは別の研修を受講するようです。
 地域によっては里親会による研修が行われているようですし、民間の関連団体による研修もあるようです。一般的に実施されている子育てに関する研修に自主的に参加するのもよいでしょう。

●里子が来るまでの流れはどんなふうになっているの?

 以下のような流れが一例としてあります。
@家庭で暮らせない事情のあると思われる子どもについて児童相談所が調査をする。
(家庭で暮らせるとの調査結果になればその子は里子にはならない)
Aその子は里親さんのところで生活をするのがいいと児童相談所が判断する。
(施設での生活をするのがよいと判断されれば里子にはならない)
Bどの里親さんがその子にとってよいかを児童相談所が判断する。
(子どもの特徴によってどんな里親さんのところがいいのかは変わってくる)
C里親さんと子どもの交流(面会・外出・外泊など)を開始し、双方の受け入れに問題がなければ正式に児童相談所から里子として委託される。
(受け入れが不調に終わることもある)

●里親に認定されたらすぐに里子が来るの?

 上記のような手順を踏むため、タイミングがよければ(認定された里親さんにお願いしたい子どもがちょうどその時期にいれば)すぐに児童相談所から打診があるかもしれません。
 しかし、そのタイミングが合わなければ長期にわたって里子の打診がないこともあるようです。

●里子として来るのはどんな子ども?

 いろいろな事情(親との死別、親の病気、親子関係の不調など)で家庭で暮らせない子どもです。  年齢としては0歳から18歳までの子どもが里子として里親さんと生活しています。

●里子はずっと里親さんのところで暮らすの?

 家族と一緒に暮らせるようになれば里親さんのところでの生活は終わります。 普通の家庭のように就職したりして家を離れて自立していく里子もいます。
 児童相談所による委託という形のかかわりは里子が18歳になるまでですが、その後も児童相談所のかかわりのない形で一緒に生活をしていることもあるようです。

●里子を育ていく中で困ったことがあったときはどうしたらいいの?

 児童相談所・福祉事務所・保健所などの公的な相談窓口や、里親支援機関(里親会、児童養護施設や、NPO等が運営)、児童家庭支援センター、民間の子育て支援センター・電話相談、地域の子育てサークルや地区の児童委員など、相談しやすいところに行ってみるといいでしょう。
 特に児童相談所は事情がよくわかっていますし、里親さん・里子ともに相談にのってくれます。「里子を委託したらあとはおまかせ」ではなく、長期間にわたるフォローや困ったときの迅速な対応をしてくれるはずです。
 立場が同じ里親同士の集まりである里親会に参加するのもよい方法だと思われます。  

●里子のことを近所や学校にどう説明したらいいの?

 里子を迎えるにあたってまずは家族内で相談をしたり、里親の祖父母・親戚などに説明し、理解してもらうことになると思います。 そのときに話した「里子を迎えるに至った経緯」「里親制度とはどういうものか」をベースにして説明するのがよいのではないでしょうか。里親から十分に説明がされ、理解が広がれば里子自身が周囲からがいろいろと聞かれて困ることもないでしょうし、受け入れてもらいやすくなるでしょう。
 学校については公的な機関同士なので児童相談所の担当者に出向いてもらうか、同行してもらい事情の説明と必要な配慮を依頼してもらうと里親の負担が軽減されるかと思います。
 いずれにしても里子やその親のプライバシーには十分な配慮をし、必要のないことについては無闇に話さないなどの対応が必要です。

●里子を育てるのにかかる費用は里親が負担するの?

 里子を委託した児童相談所から委託費という養育に必要なお金が支払われるので里親さんの負担はないということになっています。
 しかし、委託費の額だけでは里子を育てるのにかかる費用を十分にまかなえない場合もあり、里親さんの持ち出しになっていることもあるようです(部活動などの課外活動に要する費用、学習塾の費用、保険適用外の医療費など)。
 委託費の中身としては里親手当が月7.2万円(2人め以降3.6万円を加算)、生活費として子ども一人あたり月約5万円(新規に児童を委託されるときにはその準備のために充てる支度金もあります)。
 幼稚園の通園費、小中学校の給食費、教材費・修学旅行の費用などは実費か一定額が支給されます。また、高校に進学した場合は学校への納付金、教材費、通学費などが支給されます。それぞれの入進学・就職時には支度費として別枠での支給もあります。
※自治体によって支給される名目や金額は若干異なるようです。教育委員会の制度として里親に委託されている児童に適用される学費の減免制度を設けているところもあります。

●里子は保育所に入所できないの?

 里子であっても、通常の児童と同じように「保育に欠ける(家族の就労、介護、療養など)」という保育所の入所要件があれば保育所に入所できます。その場合、里親に保育料の負担はありません。
 しかし、通常の児童と同様に、「集団生活を経験させたい」「小学校に入る前に友達を作らせたい」というような理由では入所できません。そのような場合は幼稚園などの利用を検討することになるでしょう。

●里子が病気や怪我のときはどうしたらいいの?

 家族として行う対応をすることになります。事前に近所に信頼できる小児科医をみつけておくと安心です。保健師の家庭訪問や保健所での健診などのサービスについても予め調べておくとよいでしょう。
 医療費については里子の保護者の保険を使い、児童相談所が発行する受診券を併せて提示します(これにより通常の自己負担分は児童相談所へ請求されるので里親さんの負担はありません)。
 ただ、手術が必要であったりなど病院側から親権者(実親)に連絡を取る必要があることがありますので児童相談所の担当者に連絡をすることが必要な場合もあるかと思います。

●里子が誤って他人の物を壊してしまった、このときの損害賠償責任は里親が負うの?

 里親会などを通して「里親賠償責任保険」に加入していれば基準に基づいて保険金が支払われます。また、里子自身の怪我について親権者から損害賠償請求をされた場合にも支払われます。
 [千葉県里親会内里親保険Q&Aページ] に詳しい情報があります、

●里親制度と養子縁組とは違うの?

 里親さんと里子は一緒に暮らしますが養子縁組をするわけではありません。しかし、養子縁組ができないわけではなく、里親と里子で養子縁組をすることも普通の大人と子どもが養子縁組をするのと同じようにあります。
 最近では、もとの家庭に戻ることが困難と思われる里子については将来の法律的・心理的な支えとして養子縁組が検討される傾向にあるようです。

 また、養子縁組によって養親となることのみを希望し、養子縁組が可能でない児童の養育を行うことを希望しない場合は認定の際にあらかじめその旨を児童相談所に伝える必要があります。その場合、里親の区分としては「養育里親」ではなく、「養子縁組里親」として区別されます。

●里子の苗字や戸籍はどうなってるの?

 里子になっても苗字が変わることはありませんし、戸籍は親の戸籍に入ったままです。
 里子への配慮から関係機関(学校や病院など)と協議して里親の苗字を通称名として使用することもあるようですが、里子の心情などに配慮する必要があると思われます。







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