シンポジウム
元里子4人による体験談「里親家庭で育って感じたこと」
(1人目)
・5歳のときに母死亡、父蒸発。親戚宅を転々とした後里親委託。大人への信頼感がなくなりかけたときに里親宅へ兄妹一緒に行けたことでふみとどまった感じ。
自分が妹を守らないとという気持ちがあったし、自分が歩んだように妹も歩むのだから手本になりたいという責任感もあった。児相では兄弟の殻に閉じこもるからと兄弟を分けるところもあるようだが、そうならないように対応して絆を守ってほしい。
・嫌われなくないという思いを持っていた。嫌われたら居場所がなくなるという猜疑心があったのかも。
・自分より後に委託された新生児に対する葛藤、愛情がそっちへ偏っていると感じた。
・里親の離婚があったとき、困らせることも多かったので自分がいるせいかなと思った(実際には違ったらしいが)。ここにはいられなくなるんだろうなと思ったが里母が「何をしてでもみんなで暮らせるようにするから」と言ってくれて信頼がより固まった。
でも2ヵ月後に別の男性と再婚するという展開には驚いた(笑)。その人とはうまくいったので反抗期ものびのび出したと思う。
・実父を探す気持ちが生じたのは過去に向き合えるだけの準備ができたからだと思う。
・里子の人生は里親の提供してくれる環境で大きく左右されると思う。子どもが自信を持って「幸せ」と言えるように育ててほしい。
・物心がついて「自分は里子なんだ」とわかった状態でのスタートだったので、その事実は受け容れていたそのうえで「里子だから」と反抗するのは何か違う気がしたし、したくなかった。また、「里子だからダメなんだ」と言われたくないので頑張ったというのもある。
(2人目)
・乳児院から3歳で委託され、10歳で告知を受けた。
・告知のときは「目の前にいる親が生みの親ではないということ」の衝撃があったのと、これからも今までと同じようにしていいのだろうかと揺れる気持ちがあったが、両親は変わらず受け止めてくれたのでよかったと思う。
・20歳で養子縁組をしたときは嬉しさと戸惑いがあった。楽になった感じと里子ということに負い目を感じなくなった。
・里親同士のつながりが里子同士のつながりを作る。「自分だけじゃない」という前向きな気持ちや肩の荷が下りる感じ、将来のビジョンが見える効果がある。里子同士の出会いの機会を作ってゆきたい。里親さんは子どもたちをその場に送り出してほしい。
・さくらネットワーク(旧全国里子会)はまだまだ活動が不十分だけど、集まるところから始る、里子に知らせてほしい。
・8年間施設職員として勤務し、関係作りの難しさから育てることの大変さ、里親の凄さを知った。
・血縁ではなく、心、そばにいることのほうが大事。子どもたちには「今は実感できないだろうけれど、あなたのことを一番大切に思ってくれる人がいることの幸せがいつかわかるよ」と伝えたい。
・委託前に子どもが持っていた歴史と里親家庭の歴史を緩やかに解け合わせてほしい。
・里親+里子の支援=「里親子支援」で進めてほしい
・里親には養育に自信を持ってほしい、私たちもその養育に協力したい
(3人目)
・3歳で委託、短大卒で保育士をしながら里母の養育の手伝いをしている。
・小学校時代に里母から渡された「赤毛のアン」「キャンディキャンディ」を読みふけり、自分の境遇を理解した。
・門限のルールなどの厳しさは、当時はどこでも一緒なんだと思えなかったが振り返れば里子だからという区別はなかったと思う。
・告知の際は自信をもってどっしりと構えて伝えてほしい、後ろめたさやネガティブさは子どもにも伝わる、うつる。
・「自分は親に捨てられた子なんだ」という負い目があった、捨てられたという恥ずかしさもあった、普通じゃないんだという意識。
・いっぱい叱って、抱きしめて、笑って暮らしてほしい。
・結婚相手にも里親になりたいと最初から伝えてあったので子どもができずに数年過ぎて里親登録を申請した、研修・実習・家庭訪問を終えてやれやれと思ったところなんと妊娠判明。不妊治療の必要性も示唆されていたのに・・・聞くと似たような経験のある人が結構いるそうで、もしや里親登録がわが子との縁を呼んだのかも?
(4人目)
・1歳半で委託、小3で告知、高校生までは里親姓で過ごした。
・荒れていた時期はすごい言葉をぶつけたし、ルールに反抗もした。でも真正面からぶつかりあって、自分の言い分を聞いてくれ、そのうえで自分が言いっぱなしにならないようどうしていったらいいかを提案してくれた。
・いわゆる問題行動があるとき、周囲の協力を得て自分ひとりでやろうとしないことが大事。ムリにどっしりかまえようとしないでもいい。加えて本人に直接話を聞くようにしてほしい、その場を作ってほしい。
・介護の専門学校中退後、アルバイトで家にいたが20になったとき「家を出てもいい、自分の責任で生きていい」と言われあせりや居場所を失う感覚が生じ、甘えていたと感じた。
・両親が本気で、全力で受け止めてくれたことで自分の過去にとらわれることがなかったのだと思う。
・今の自分の子育ての基本は子どもとしっかり向き合うこと、両親がやってくれたことをやっている。ケータイっ子だった自分が周りから「どうしちゃったの?」といわれるくらいケータイは見なくなった。
※上記内容は当日の内容を管理人が聞き、再構成したものです。
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