項目 内容

ふじ虹の会フォスターセッション
〜こんなことで守ることができるなら〜
2017 参加レポート



平成29年10月28日(土)
10:00〜16:30
富士宮市役所
 7階特大会議室



イベントフライヤー

1:主催者挨拶

(印象に残った発言)
・活動している中でいろいろな分野の人と接して感じるのは、みんな「問題があるのはわかるんだけど、どこからどう手をつけていいものか」と日々悶々としているということ。
・問題意識だけが心に居座ってしまい、気持ちが疲れてしまう。組織で仕事をする中で問題に気付いた人も、同様の思いを抱えたまま過ごし、人事異動により後ろ髪を引かれる思いでその分野から離れるてしまう。
・問題があることを共有、発信する場が必要。このセッションは今回で6回目になる。準備や運営は大変で、「もういい、今回で最後にしよう!」といつも思うけれど、問題に関わる発信者と会場の受信者のつながりが生まれ、広がっていく様を目の当たりにしていると高揚感が湧いてくる。
・今回のイメージは少し気楽に、POPな感じで参ります。インスタにも上げてね。

2:里親普及啓発報告

(印象に残った発言)
・児童家庭支援センター(略称:児家セン)の業務の一つとして、平成29年4月から県の委託を受けた3箇所のうちの1つとして里親支援事業を行っている。委託を受けずに支援事業を実施しているところもある。
・普及啓発活動として、1校区1里親の実現のために富士市に26あるまちづくりセンター全てで里親説明会を実施中。現在は平日昼間だが、今後は参加しやすい夜間・土日の開催も検討中。
・里親が集まるサロン活動は、里父交流、養子縁組里親サロンも開催し、好評だった。

3:行政説明「富士市・富士宮市の現状」

(印象に残った発言)
・児童相談所(略称:児相)は24時間365日対応している。何かあれば当番職員が肌身離さず持っている携帯電話が深夜でも鳴り、対応を終える頃には日付が替わり、それでも普通に翌日の仕事はやってくるということもよくある。
・虐待が社会問題化する前の児相はよかったと先輩職員は言う。その頃の対応の中心は不登校や非行の児童で、子どもを集めてキャンプをしたりしていた。職員の人数も少なかったがのんびりやっていた。
・今は児相全国共通ダイヤル189の開設、死亡事件についてのマスコミ報道による危機意識の向上、警察の面前DV連絡などで対応する案件の数も深刻度も上がってきていて、年300件発生するこの地区を9人のケースワーカーでやっていくのは大変。
・虐待対応は虐待を否認する親との対立もあって困難度が高い。その中でも、「大人はだれも信用できない」という思いで過ごしてきた子どもの信頼を得られる瞬間には喜びがある。
・昔は意識されることの少なかった「子どもの権利を守る」ということが問題や対応の中心的な考えになってきている。「愛のムチ」のような考えで星飛雄馬に特訓をする星一徹は今なら虐待通報されるだろう。
・市から児童相談所に連絡の来る案件の数は減っているが、それは深刻な案件か否かについて富士市、富士宮市の児童相談担当が精度の高い見極めをしている現れ。児童の安全確保のための親子分離(一時保護)の案件は逆に増加している。
・一時保護をしている2ヶ月の間にその子の将来の方向付けを決断しないといけないので、責任は重く、辛い気持ちになる。
・静岡県の登録里親数(静岡・浜松市は除く)は281家庭、それに対して委託中の家庭は84、200以上余っているなんて児相は何をやっているんだと思われるかもしれないが、委託をできない事情が現場にはある。
・1つは児童の持つ特性によるもの。虐待の被害を受けた児童の心理的な治療、愛着障害や発達障害の状態の見極めのうえ、養育・療育のプロに施設で対応してもらった後に里親に委託するプロセスをとるため。
・もう一つは親の里親委託についての不同意。「施設はいいけど里親は嫌」「里親のところにいったらもう自分の子ではなくなるから」という親に、家庭的環境のよさを説明してもなかなかうんとは言ってくれない。
・そんな現場の課題をよそに国の方針は社会的養護児童の生活場所として「大規模施設・小規模施設・里親家庭」で1/3ずつとする目標を「施設入所の原則停止、里親委託75%」と変更した。方向性に異論はないが、里親家庭の絶対数の増加と、対応の困難度の高い児童でも受け入れ可能な里親家庭の増加が必要。

<<勝手にサブタイトル「児相はつらいよ〜拝啓厚生労働大臣様〜」と付けたくなるような訴えでした、こういうところに人と予算を回してほしい。>>


4:児童福祉施設企画「未来を切り拓く子どもたち〜自立に向けて〜」

(印象に残った発言)
<吉原林間学園>
・平成29年4月に児童福祉法の改正により「情緒障害児短期治療施設」から「児童心理治療施設」に名称変更。環境(家庭、地域、学校など)上の理由により、社会生活への適応が困難になった児童を対象に、適応するための心理に関する治療及び生活指導を主として行うことを目的とする施設。
・以前は「軽度非行、不登校、かん黙」などの現れのある児童が多かったが、近年は「被虐待、発達障害」を背景に持つ児童が多い。 ・児童が受ける虐待の影響は「感情コントロールの困難(この世界はひどいところ、という被害的思い込みによる激しい怒りや不安を抱いている)」「行動コントロールの困難(何でもないような些細な刺激に対し、攻撃・逃避・固まるといった極端な反応をする)」「発達の偏り、遅れ(脳神経細胞のダメージにより、学習の遅れやざまざまな不適切行動を呈する)」
・総合環境療法という仕組みを持っており、施設での生活の周りに医療・心理・学校が隣接し、刺激が少なく限られた空間の中で、児童の抱える問題を共有しながら協力して治療にあたる。安心で安全な環境のもとで愛着体験を提供し、トラウマ(虐待の影響)やその対処方法についての専門知識に基づき、生活全般を通してトラウマ治療と情緒的安定をはかることが理念。
・施設の支援だけで解決できることはない。施設という限られた空間でうまくやれるようになっても、児童がいたい場所や帰りたい場所で再び困難な状況になってしまっては意味がない。家庭や学校や地域での支援も必要、そことの施設の連携協力を行う。
・児童が「施設の生活をでがんばって、あそこに帰りたい」というモチベーションになるように、家庭や地域社会が幸せな場所であるように、大人にもがんばってほしい。家庭に帰れない場合は、里親や地域の大人が「あの人なら頼ってみたい」という児童の心の支えになってほしい。

<岩倉学園>
・環境上養護を必要とする児童を入所させ、自立のための援助を行うことを目的とする施設。
・短期の一児保護委託から十数年にわたって生活する児童まで様々。年齢は概ね2歳から18歳まで。定員は男女計30人。東部地区出身の児童が多い、入所理由は被虐待が7割、他には親の精神疾患や経済事情が続き、親のいない子は1人だけ。
・里親委託も検討したが、親の不同意でこちらへ入所という児童もいる。吉原林間学園や乳児の施設から施設変更で来る児童と家庭から直接来る児童の割合は半々。
・地域とのつながりを大事にし、学校のPTA役員を担ったり、子ども会や町内会への参加、お祭りへの模擬店出店などもしている。地域での信頼をもとに職業体験やアルバイトの受け入れに協力を得られ、それを児童の自立に向けた経験の場としている。夢を応援する立場の職員とは違う、現実の厳しさを語る人との出会いも貴重な経験。今後は年齢別のプログラムや1人暮らし体験などの整備を行っていく。
・中学卒業、高校卒業時の節目で自立に向けた方向性を決めることになる。生活の場所は家庭復帰か独り暮らしや就職先での寮生活となる。18歳を越えても措置延長という形で施設の関わりが続けられる場合もある。
・自立(独立・独り立ち)のためには自律(自分の持つ規範に従って行動すること)も大事。被虐待などの困難な環境に置かれ、家庭で生活できなかったというネガティブな側面だけににとらわれず、自分自身のヒストリーとして施設で暮らしてきた時間を受け入れて、生きていくことができるようになることが「自立」になると考えている。

<質疑応答>
Q1:進路について、親子間で意見が異なる場合はどうやって調整しているのか?
A1:児童の希望が進学の場合でも、家庭の経済的な困窮などの理由から「中卒で就職させる」という親もいる。その場合は児童の思いを実現させる具体的な方策(措置を継続し、施設から通うことで生活費や学費は親の負担にならない、軽減できる方法もあるなど)を提示する。
Q2:施設による地域の支援はどんなものがある?
A2:専門知識や対応方法を紹介するプログラムを行っている。生活場面の担当者と里親などの養育者が懇談することで、互いのねぎらいや情報交換の効果も得られると思われる。施設の児童向けのプログラムを施設外の同じような課題を持つ児童にも開放できるといい。
Q3:施設が地域に求める支援とは?
A3:職業見学訓練について、児童の特性を理解したうえでの受け入れをしてくれるといい。信頼できる大人との出会いが多いほど、児童が社会を信頼できるようになるので、施設や学校でない場にいる大人との関係を広げていけるといい。ショートステイで来ている児童を、市の福祉事務所で学校等への送迎をしてくれていることは非常に助かっている。

<<施設がそこにあること、はもちろんですが、そこに蓄えられた英知や人間関係もまた地域の財産なんです。眠らせておくのはもったいないです。>>


5:シンポジウム「知らなくても過ぎてしまうことかもしれないけれど、あなたに知ってほしいこと」

(印象に残った発言)
・静岡県立こども病院の相談員として感じる入院児童のイメージは「一般の子ども観に較べて非常に脆弱な児童」悪い印象の言葉で言い換えると「弱っちい」。
・先ほどの吉原林間学園での感情や行動コントロールの困難によるぶつかり合いをできるようなエネルギーがない。些細なことで強いストレスを感じ、ベッドの上で引きこもってしまうような反応をする。
・それゆえに、問題を抱えていても表面上の行動にはなかなか現れがなく、限界までためこんで急に自死につながる行動に出てしまう。児童の側からSOSを出さないので、大人が気付きにくいことも確かだが、些細なサインに気付けない、向き合えない親も多い。 拒食症で、検査をすれば明らかに体重も脈拍も生命維持ギリギリのレベルなのに、学校では部活も勉強も優秀にこなしている児童がいる。
・医療、教育、福祉の連携はできている時期もあるが、学校のステージが変わる(幼→小→中→高→大)タイミングで、組織の大人の側は引き継いでいるつもりでも、児童(や家庭)にとってきちんと次へ引き継がれないで、支援が途切れてしまう例がある。
・どんなに医療を尽くしても、治せないものはある。「地域」は治療や学校の切れ目に関わらず、ずっとその児童に関わり続けることができるので、その児童にとって「使える・助けてもらえる」社会資源を発掘していくことが大事。
・その手に不安を抱えきれない児童は、高度成長期に日常に精一杯で不安を深めずに生きてこられた世代からすると未知の存在に思えるのかもしれない。

・望まない妊娠を背景とした子ども虐待の発生を予防するための「しずおか妊娠SOS」には、孤立した女性の深刻な相談が多く寄せられる。妊娠や中絶についての知識がなかったり、経済的に困窮していたり、希望が見えなくて死にたいという話も来る。
・「思春期相談室ピアーズポケット」はピアカウンセラーの大学生中心に対応をしている。1日平均25件、多いときは70件の電話、メール、面接相談がある。身近に相談できる人がいないためか、性に関する相談も多く、性被害が疑われるケースもある。
・近年、中絶の件数は減っている、これは妊娠自体が減っていることにもよる。20歳未満と40〜44歳の中絶件数はほぼ同じ。
・日本の非嫡出子は近代化に伴って1%未満になってきた流れを経て、最近は増えている(2016年で2.29%)が、他のアジアは数%、中南米は割合が高く(60〜70%)、ヨーロッパも桁違いに多い。日本はこの悩みの深刻度が上がる特徴的な素地がある。
・匿名だからこそ拾える声でもあると思う、それゆえに「ここから先は本人しだい」になってしまうのが辛いところ、この人たちは行政の相談窓口にはになかなか繋がれない。匿名であっても地域で頼れるところが、つながれる先があることが大事。
・地域は、受け皿になりうるのだろうか。子育て世代包括支援センターにちゃんと包括してほしい。

<<知ること、は知識としての蓄積にとどまらず、感情の蓄積も生み出します。感情を多く湛えたダムの力が新たな行動のエネルギーになると願って。>>


6:トークセッション「地域子育てリレートーク フォスタリングって何だ?」

(印象に残った発言)
・「気軽に里親になってみた」人として、感じることを。赤ちゃんの新生児微笑から「人は愛されるように生まれてくる」と感じたり、たまたま新聞で目にした坂間会長の養育の姿、以前のこのセッションやIFCA報告などの刺激を受けるうちに「何かできればいいな」と思った。
・夫や自分の仕事、実子との時間の持ち方などについてよく考え、まずショートルフラン(短期の預かり)から初めてみようと里父欄は空欄で申請書を出した。児相からは「夫婦でできませんか?」と言われたが、事情を説明し、1人でスタートした。
・ショートルフランをする際の心持ちは「特別なことをするのではなく、日常の中へ受け入れる」というもの。普段から近所の子が遊びに来たり、友人の子が泊まっていったりという家庭だったので、実子たちの受け入れもよかった。
・今回のセッションのテーマ「こんなことで守ることができるなら」そのもので、「自分にできるんだろうか」と構えて悩まずに、セッションでの坂間会長の「やれますよ」という後押しに対し「やれそうかも」と思ってスタートしたことがよかった。
・施設で生活している児童は「自立を求められている」と感じているように思う。かんばる姿勢は頼もしい反面、自立しつつも、適度に甘えられる対象があってもいいのではと思う。

・「里親になろうか悩み中」の人として、思うところを。
・しずおかおみあい倶楽部の代表として、40歳〜の女性と多く接する。この人たちに里親という選択肢はどうだろうと考える。
・自分自身は37歳で結婚し、不妊治療中。子育てはしたいが、里親として全く初めての子育てをするということには「ハードルが高い」と率直に感じるところがある。

・特別養子縁組は「子どものための制度です」と、いろいろな場で言われる。が、しかし、正直なところ、大人の側の動機もなければ両者のマッチングはなされないとも思う。人として、人(子ども)を育ててみたいという気持ちからスタートすることを否定しなくてもいいのではないか。
・「100%子どものためです」「全てを子どもの幸せのために捧げられます」っていうのはちょっとムリがある。そういう人は養育の中で困ったり悩んだりしても「あんなに大見得を切ったんだから、弱音なんてはけない…」と追い込まれてしまうのではないか。
・「大筋としては、子どものため」で、よしとしてスタートし、人それぞれの事情によるグレーな部分と折り合いを付けつつ、里親をやっていってもいいのでは。

・子育てと仕事、母親と働く人を一緒にやっていくのは、なかなか言えないけど「大変だった」。
・自分の時間がなくなると、自分の好きなものが周りに無くなっていく。TVも雑誌も外出先も服も全てが子ども=母親ベース、これは苦しい。
・仕事先を探す際の条件も「やりたいこと」「向いてること」をベースにした新卒時とはうってかわって、「子育て可能な労働条件」が最優先で、何だかなぁと。
・そんな中で出会った今の会社(女性イキイキカンパニー)は名称からして「ここだ!」と思えるところだった。働き方も、会社の求める働き方に応える人を求めるのではなく、それぞれの社員の生き方に合わせた働き方を会社が作るという発送の転換がそこにはあった。
・働く中で、自分が好きなことを見つけるモノの見方が戻ってきて、それによって周りにも広く目が向くようになった。これは家庭でも会社でも、自分と周囲を豊なものにしていく効果があると思う。

・勤務先は社会福祉法人であり、高齢者に関する社会福祉事業を主として行っているが、広く地域の課題を解決する活動こそが福祉事業の始まりであることに鑑み、公益的な取り組みとして様々な課題に取り組んでいる。
・放課後の子どもの居場所、若者の自律支援、不登校児の居場所づくり。これらは地域で気付いた人がいて、まずできることを始め、そのつながりの中でできる人がさらに集まって広がっている。
・「包括」という言葉が流行る昨今だが、年齢や法律による縦割りでない、地域まるごと包括で進めていきたい。

<<地域で子育てをするのは、その子の親だけじゃない、子どもを気にかける フォスター=非血縁者 だ。気付き、気付かれ、見守り、見守られ、支え、支えられる地域を作るのは行政じゃなくて住民一人一人です。>>



7:ラストスピーチ「フォスターユース体験談」IFCA静岡ユース

(印象に残った発言)
・まず最初に質問「児童養護施設出身の人ってどんな人だと思いますか?」(会場から「大変な環境の中で努力して、若者への期待を抱かせる存在」「率直に大変なんだろうと思う」の声)私たちはそういうイメージを変えたいです。自分が自分に抱いているイメージとギャップがあるので。こういう場に来られる方は知識や理解があるので、そう的外れなことをおっしゃらないと思いますが、「かわいそうにね」「税金で暮らしてるんでしょ」とか言われることもあります。
・ドラマとかの登場人物の経歴の中に「施設」って出てくると、たいていその人物の「暗部」という記号に使われるんです、ワンパターンなマイナスイメージ。
・「一番大変だったことは何?」ってよく聞かれるんですが、私の答えは「一番は特にありません、たくさん嫌なことはありましたけど」ってなります。嫌なことの代表は暴力、私がいたところのメンバーは幼〜高まで男女22人くらいで、ガラスは割れるわ、食器は空を飛ぶわで、今思うと被虐待で逃げてきてるのにあんまり落ち着かない過酷な環境でしたね。暴力の量や重さは「家族から<施設のメンバーから」でしたけど、心の傷(ちょっと恥ずい)は「家>施設」でしたね。だから帰りたいとは思わなかったし、帰りたいという願いごとを七夕の短冊に書くメンバーがいることが不思議だった。
・社会に出るときに困ったことは、東京の施設から静岡の大学に来ると、公の奨学金はほとんど対象にならなかったことです。東京の施設から東京の大学とかならあるんですが、仕方ないので民間の奨学金を探して、給付制のものがもらえたので今はそれとアルバイトの収入で大学の寮で暮らしてます。
・成人するまでは契約ができないことに困りました、保険証もなかなか作れなくて。そういうことを相談できる相手や頼れる人がいないのが困りますね。もといた地域を離れて、知り合いのいないところに来ると、どっちにも頼れないので。家族は必要ないと思っていたけど、家族がいれば苦労しなくてもいいこともあっただろうなと思います。
・大学では一般家庭の都会のお嬢様を演じてます、自分の過去にわざわざ触れる機会は少ない。でも、切っても切れないことだから、こういった活動の中で整理が少しづつできているし、専門の人の助けを借りてライフヒストリーの振り返りはしたいなと思います。
・嫌なこともいいこともあったけど、一つのエピソードとして、中2のときに部活で足を怪我して、松葉杖を使うことになったことがあって、学校に行きたくないって言ったんです。施設の職員は「今行かないとずっと行けないぞ」と言って登校するよう促してくるんですが、私が行きたくない理由っていうのが、松葉杖だと教科書とかを回りの人に持ってもらったりしなければならなくて、そういう迷惑をかけたくないってことだったんです。不登校になる子もいる中で、今の短大まで進学できたのはよかったけど、その理由に何にも触れずに「行かないと」って言われたのは、ちょっと悲しくて、気持ちを汲んで対応してもらいたかったです。
・就職が決まるまでは、「早く働きたい」って気持ちで進んできたけど、見て見ぬふりをしていた気持ちに向き合わなくちゃと思うようになった。トラウマを振り返って整理していくことは必要だと思う。その時その時で受け止めは変わるだろうから、その時その時で向き合っていけばいいと思う。
・アメリカに児童福祉の視察に行きました。一児保護所での私物の取り扱いに大きな違いがあって、日本だと「みんなと不平等になるから」「そういう決まりだから」って冷たく身ぐるみはがされてしまうけど、アメリカでは「他の子のものと混じってしまうといけないから、そうならないように一旦預かる。でも、あなたにとって大事なものなら、あなたにちゃんと返すから。」とちゃんと納得できるようにしてくれるそうです、優しい理由だと思いました。子どもの権利ってものがきちんと考えられて、守られていると感じました。
・リトルウィッシュプログラムという、子どもの夢をかなえる活動があります。大人のお仕着せのプレゼントではなくて、子どもの「したいこと」からスタートして、それをかなえてくれる(「ピアノを習いたい」「キャンプをしたい」「新品の学用品が使いたい」など)というプロセスがあります。一般家庭の子なら普通にできることは、社会的養護のもとにいても同じようにできるようにするという考えです、日本では、なかなか難しいようですが。
・この場をお借りして2つのリクルートを、一つはユースの仲間を増やしたいので、18〜29歳の社会的養護出身者に声をかけてください。同じ立場だから言える「社会的養護あるある」を話したり、大学生活の中では出せない自分を出せて嬉しいです。共に語ることで、勇気をもらえたし、きっといい経験になると思います。
・もう一つは活動を支援してくれる大人の人、サポーティブアダルトの募集です。これまでは打ち合わせの会場の提供や、視察の準備などで協力をしてもらっています。

<<若者の成長こそ、私たちの希望です。そのために貸せるものは手だろうと頭だろうと人脈だろうと惜しまず出しましょう。>>

8:閉会の挨拶

(印象に残った発言)
・今回のテーマ「こんなことで…」ということは、種をまく事だし、芽を出す助けになる、全てはつながっていることなんです。ふじ虹の会の活動を始めたときは「先進的だ」なんて言われましたが、私は「何を今さら、こんな当たり前のことで?」と思いました、ただ単にこの社会的養護の世界では当たり前でなかっただけです。
・現状を疑い、シンプルに「何をしたらいいか」を考える。ものすごい新発明をしなくても、ありものを組み合わせて使うだけで、これほどの価値に気付ける、生み出せる。それをさらに次につなげていくことは、これからも続くのです。
・「新しい社会的養育ビジョン」によって、立ち居地が変わる人も組織もあるでしょうが、変わったことについてこれからも話し合って続けていく、それだけだと思います。

※上記内容はセッションの内容を管理人が聞き、印象に残った部分を再構成したものです。「発言」と表記していますが、管理人が受け止めた心情を加味した表現であり、発言者の言葉どおりの記録ではありません。

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