ROOM001


「世界に溶かせば」

幼いときの一大事
こわしてしまったおとうさんの万年筆
小学校の一大事
忘れてしまった水着と帽子
高校生の一大事
どこかで落とした通学定期

日々を重ねるにつれ問題は大きくなっていく
ごめんなさいですまない規模になっていく
今のあなたの一大事
どんなに大きくなっていますか

けれどもあとから振り返れば
きっとその小ささに微笑ましく思うはず
あの日の一大事のように

だから
悩みは
世界に溶かそう
自分の中でなんとかしようとしなければ
きっと悩みは薄味になる
そんなことで全てを終わりにしようなんて
思わなくなる




「自由なダンボール」

僕が手にするダンボールは
いつも
何かの役目を終えて
自由になったダンボールだった
ダンボールの役目がなんだったのか知らない頃から
表面に書かれた文字から読み取れるようになる頃
それがリサイクルされると知った頃
時は移れどいつでもダンボールは新しい何かを僕にくれた
いたずら書きのキャンバスとして
草そりとして
安価な舞台道具の素材として

何か で あることよりも
何か に なれること
それは ダンボールのぬくもりから教わった

「いろいろ覚えてきたけれど」 生まれてここまで いろいろ覚えてきた、教わってきた 指の動かし方 はいはいつかまり立ち ことば 文字 乗り物の動かし方 機械の動かし方 感情の制御の仕方 あきらめ方 でも 行き詰ったとき 苦しくて苦しくて どうにもならないと思えるとき それらの大半は役立たずに思える 資格も技術も肩書きも 結局のところ本質ではないのかもしれない ふと 思い出す 呼吸の仕方 息苦しいのは それを忘れていたから 生きていくのに まず覚えたそれを ないがしろにしているから すうっと 息を吸う ふうっと 息を吐く まずはそれから 全てはそれから もう一度 ゆっくり はじめよう 「あなたとの出会い」 100人に問いかけたら 100通りの答えがかえってくる ひとつとして同じ答えはない そこから感じる思いも100通りある それは自分の中の100通りの感情に出合ったということ 100人と話すことで その中の誰かの言葉によりかかろうとしたのじゃなくて 自分の中の感情に 出合った人の数だけ出合って 自分との対話が始めたんだ だから あなたに会ったとき あなたが感じていることは あなたの中にあったこと わたしはそれに目を向けるただのきっかけ 道はあなたの中にある 「叫びを溜めろ」 誰にでもできることだけしていれば 皆がうらやむ未来がやってくる 腐った未来がやってくる 今日も毒を飲み干すやつらは 毒が身体に回る前に 早死にすることを夢見つつ 墓場へ栄光を持ち込みたがる 腐った未来に目をつぶり 我先にと滅んだ年寄りたちに続いて 未来に裁かれることなく さっさとおさらばしたいのさ 己の道を貫く者よ 何にも不平を言わぬ者よ 何にも言い訳をせぬ者よ 己の全てを引き受ける者よ 悔しい気持ちも 真夜中の叫びも 今は大切にとっておけ 腐った未来に飲み込まれないよう 静かに牙を磨いておけ 雑魚にかまわず 心を乱さず 昼行灯を装って 前と後ろを向いておけ そのときが来たら お前が頼りだ

「堅いハリガネの伝説」 1人荒野を歩み始めたとき 矮小なプライドで織り上げたものの 掲げることさえびくびくしてた 自分の旗 噂に聞いた硬いハリガネ 必死に探して埋め込んだところで 旗自身が強くなれるわけじゃないって 気付かずに やはり風には耐え切れず 不釣合いなハリガネに頼ったがゆえに 旗は跡形もなくちぎれ飛び 手にはハリガネだけが残った のちに旅の者が行き倒れた彼を見つけたとき そのハリガネは ひどく錆びていて 屑鉄としても使い物にならなかったということだ なぜ彼は なによりも強い 自らの信念にて その旗を支えようとしなかったのか もしかして そんなものは なかったのだろうか 「私は他人である」 確かにコトバはココロを越えられないし コトバはいつも想いに足りない だからひとはひとりぼっちだし けれどひとりぼっちを寂しがるいきものでもあるから しまつがわるい つながりあうことも理解しあうこともできないけれど つなあがりあったつもりのつきあいも 理解しあったふりもしなくていいということでもある ひとついえるのは むずかしいことを考えずとも 偶然にも同じこの時間に生きていることはたがいにわかる 風景のようにそこにある 人と人の関係はそれだけのものでもいいのだろう 「麻薬との別れ」 いつのまにか大地は2つに裂かれていた 私ひとりが生きる谷のこちら側と みんなが生きる谷の向こう側に こちら側には苦しみが山とあり ただ生きることすら容易ではない 水も大地も緑の木々も 目に見えるものは全て向こうとこちらに同じ物がある ものわかりのいい「私」までもが向こう側にはいる 私は弱さに負けそうになるたびに 一時しのぎの麻薬に手を染めて 苦しみから辛うじて心を守っていた その麻薬と縁を切ろうと決めたとき 私の中には 麻薬中毒の乾いた心と 谷へと身を投げたい空虚な心とに押しつぶされそうな 向こう側を目指す先細った心が存在していた 麻薬でごまかした鉛色の気持ちをきりきりと絞り 谷に掛けるロープを造るための糸を紡ぎ出し続け なんとか形になったそのロープを向こうへ掛けたとき そこには谷などなくなっていた こちらの私も むこうの私もなく 私は ただ私として立っていた 「心の本棚」 私は論文を書いている 一生をかけて練り上げる論文だ そのときは自信にあふれて書いてはみたものの 最終原稿には載らないであろうページも数多くあり 足元に踏み場もないほど積もっている しかしそれは確実に結論の礎になっていくだろう 完成はしないかもしれない 日々の中で新たに気づくことは多く 通いなれた通学路をふと横道にそれたときのように わかったつもりでいたことのさらに奥を垣間見たり その裏の面をみることもあるからだ そんな「何か」があることを期待し続けているわけではないが 幸運にも出会いは続いているので たまたま改稿が続いているだけだ その度の改稿が良いか悪いかはわからないが どちらにせよ厚みは増しているだろう それならいいのだ ただ 図書館で借りた本の引用をするようなことはしない 借りた本では字面しか拾えない 借り物のことばでこの論文を作るわけにはゆかない 本から何かを得ようとするのなら己の本棚に留め置いて 己の心の動きの度に読み返し そのことばに一生向き合ってゆく覚悟が必要だ 父の書斎にあった無骨な本棚 そこに収められていた全集のような立派な本ばかりではないだろうが この論文を支えてくれることには間違いない 自分の本棚を 心に築きたい 「解放世界」 胸深く空気を吸い込み 水の中へもぐる 水につつまれ水に閉ざされたそのとき はっきりと私を感じる 私の鼓動とぬくもりを感じる ヘッドフォンに両の耳をつつみ 澄んだ音をたどる みちびかれた場所は丸い頭頂のドーム 清らかな響きに満たされた場所 解放されている と 感じる 丘にのぼり 空をながめても 私の知らないものや私の望まないものが 刹那の解放感をザラザラと汚してゆく 私は晴れた空を支配できない その下の地平を支配できない 私は夜を支配できない ベッドの上の小さな闇も 重さの定まらない不安に汚され支配できない 私を限れば 私は支配できる 純度の高い 濃密な解放がそこにある 私の生きる場所は 広い世界だけではないのだから 「信じるために必要なもの」 ぼくはいつも りんかくのはっきりしたものを求めていた 確かな手触りを持ち 壊れないものを いじめっこに砂場の山を崩されて泣いた あの涙から無縁になりたくて そこにとどまらず 何も残さず消えることばでも 見えない気持ちよりはましだから つい それを求めてしまって それしか信じられるものを 見出せなくて 信じられるものをくださいと だた求めるだけ ねえ 何にも頼らずに 信じてみない? 信じる気持ちだけで 信じようという気持ちだけで 信じてみない? そうじゃないと 信じる なんて できないよ それは 信じさせられてる だけだよ そして 騙されてる だけ かもしれないからさ 「不安な気持ちはぼくじゃない」 胸の中 気持ちは回りつづける この世に摩擦というものがあるから 車は前に進む 人は前に進む 多少のエネルギーを削られつつ けれど 宙に浮いた 摩擦を知らない球体のようなこの不安な気持ちは 全てのエネルギーを 回転力に変えて くるくると回りつづける 幾日も幾日も 忙しさの中でおとなしくなることもあるけれど 電車にぼんやりと運ばれるときなど また いつのまにか回りだしている そのうち なあ どうしてそんなに回るんだい と ぼく が ぼく に 言ったような気がした ぼくは 気持ち じゃなくて ぼく だということ 忘れてたみたいだ 「君の果て」 英雄の価値 凡百な自分の価値 それは同じ? 違うなら誰が決める? 価値を求めるから苦しいけど それでも つまらない自分には価値がないと思ってしまう いなくてもいい と 比較するものじゃないさ 自分の中にしか それをはかるものさしはない だから 自分は自分でいいって 自分に自分で価値を認める しか ない 絶対肯定できる 絶対否定できる 価値なんて街に落ちていない 世界はわりと広いよ いま、ここで生きる価値が見つかなければ ここではないどこかをどこまでも遠く探しに行けばいい またはこの場所の可能性をどこまでも深く探っていけばいい 自分がゆけるところが自分の広さだから 自分も そんなに狭くないよね 自分の知らない 自分の広さ 探してみようよ 「待つということ」 「待つ」ことをしなければいけないときがある 待つということを意識して 待つ と その時間は果てしなく続くように感じられる 待つことで得られるものが 必ずしもいいものだとは限らないとき それは特に顕著だ 何をしていても それには意味がないのではと思えたり 実際意味がなかったり 何かするとそれが悪い結果を呼びそうに思えたり 待とうと思って待つ 待つためだけに待つなんて つらいことだ 待ったところで先へ進めるわけじゃないし 待ったとしても報われると約束されたわけじゃない 待ったとしても何も変ってゆくように思えないから 自分にとっては そう 何も変ってはいかないのに 心だけは結果に思いを馳せて 勝手に激動している なんかこっけいだね でも、待つことしかできないときはあるから そのときは 何も変っていないんだって プラスに考えて 何も変っていないんだから 心を無理に待つことに縛られて 激動させることはないよ はるか昔から続き はるか未来まで続く 空を見上げて ゆっくりと流れる時間を大事に感じよう 大好きなひとがいるこの世界を 大好きなひとがいるこの時間を そう それを感じたときから 幸せということばの意味を知ったんだから 「ニュートラル」 ニュートラル になってみようか 一度 全て忘れるんだ どうにでもなれる自分になって 何かに没頭してみて 自分が一番自然になるようになってみれば 少し怖いけど 好きということからも離れて 友達という関係とか 結婚した彼女とかも 考えてみて 思いから 自由になって そこにいるのが 今の自分 選んでもらえないかもという不安から 臆病に未来を守ろうとする気持ちから 自分を切り離すと 見えてくる自分 ひとつひとつ取り去っていって なくしたくないもの 一つだけ残すなら あの人 になる? それとも 自分という存在? 自分だね だったら「自分」から始めないと 自分がなけりゃ ぬけがらだ かっこつけて 「あの人」がすべてなんて言っても 言ってるのは やっぱり自分なんだよ 自分込みであの人が大事 自分がいなくなっても あの人の心に残りたい そんな気持ち 「私には後がある」 疲れきっていても 短い眠りに満足できずとも 踏みとどまろうという意志が そこにある 社会適応 「みんな」の期待にこたえること なぜ 「みんな」はできるのか みんなは 社会は わたしの まわりでしかないのに わたしがいなくてもかまわないかのように わたしをおいていくくらい 整然と歪み 整然と騒がしく 先へ先へと進んで行く 転ばされても 押し流されても 放り出されても 奈落の さらに奈落へ捨てられても わたしにはまだ後がある どこまでも どこまでも 後がある ウワサ好きな 「みんな」 なんかに 追いつめられたりしない くるくるまわる 永遠に開き続ける ドアのように どこまでもさがりつづけても おしまいまではいかされないよ 「わたしにかまわないでというわたし」 こころの素顔に向き合えば それはたぶん 泣き顔であることも多くて けれど 誰にも見せまいと 軽やかすぎることばと不可思議な笑みで こぼれ落ちそうな思いをせき止めて 抱え込み まるでここは偶然迷い込んだ異世界であるかのように 私が私に興味を抱かぬよう 焦点をぼやかし 自分の輪郭を忘れ 自ら世界にとり残されるように駆けてゆく 広がり続け 永久に続く世界の中で 現実の自分を限りなく小さきものとして 自分が消えることなど 取るに足らぬこととして 目をそらせるよう 現実や日常からわずかに浮かび 次第に 世界を高くからみつめて 降りはじめた雪のように 消えてゆくことを夢見る 「目のまわるようなぬくもりを抱きしめて」 出会いには 楽しさだけでなく いろいろなやっかいごともついてくるし 悲しみも訪れる けれど それを災いと感じ 逃れようとする者たちより 私は幸せだったと 幸せだと胸をはれる 穏やかなぬくもりがあれば 目のまわるようなぬくもりもあるのだから そのどちらもいとおしいものだから 死によって訪れる別れも 避けられぬ悲しみだけれど 悲しみは温かさを知らなければ感じられないものだ 悲しみを捨て去るのではなく その奥にある温もりを抱きしめて 温もりに抱きしめられて 強さに育ててゆこう それが あの人がくれたぬくもりにこたえることになるから 「世界を広げる」 世界を広げるってことは 車や 飛行機や 電話線にたよることじゃなくて ちゃんと見るということ ちゃんと歩くということだと思う そうじゃない広げ方をしても 自分とその場所とのつながりがないから 砂に書いた線路のように さらさらと消えていく 今の自分につながれないところに むりやりつながっても 今いるところから逃げただけになってしまう ここでしか会えなかった人がいるということは その時間で 出会えた人がいるかもしれないということ 単なる 一つの選択の結果 唯一の 尊いものとは 限らない それだけが 世界の全てじゃない 「無責任な大丈夫」 結局のところ 時を区切ってみれば ありありと幸せな人もいて ありありと不幸な人もいるわけで でも 時を進みを止めてみれば 次の瞬間に とんでもないどんでん返しがあるかもわからない なんてのは詭弁だけど いつかは大丈夫になるかもしれない そういう可能性は ないとは言いきれない だから僕は 大丈夫だよって 無責任に言えるんだ ぼくがここにいることは そんなに大したことじゃないかもしれないけど 僕以外の人が 君の窮地をなんとかしてくれるのかもしれないけど それで 君が笑えるかもしれないなら 大丈夫って 言ってもいいよね なんでそんなこと あなたにいわれなくちゃいけないの って 言えるくらいの元気がでるまで ここにいるよ 「旅路」 目的地がどこだって 楽しいときは楽しいし そうでないときはそうじゃない 駅弁が当たりだったり 話のおもしろいおじさんが隣に座ったり 突然雨が止んでたまたまきれいな景色に出会ったり 旅は旅路の積み重ね 出発と帰着の一瞬の外は 全て旅の途中 目的地ばかり見るんじゃなくて 道のりを楽しもうよ あてのない旅だって楽しいものだよ 先を見るために今を適当に切り捨てることは スカスカの足場の上で虚勢を張った 遠い未来の自己満足への道程 自分が思い描いた未来なんて 日常に簡単に追い越される それにしがみついても それにさえたどりつけないかもよ 今 足元にある 名も知らない草に 何かを感じられる歩き方もいいんじゃないかな 「死なないこと 生きること」 死なないでいるより 生ききりたい 死までの時を引き伸ばすために生かされるより 生きる意味を貫きたい 結果は同じ「死」でも 生きた意味を持たない時間はいらない 死なないために引き伸ばされる生はいらない 私の生は 生き長らえるための生ではない 生にしがみつくための生ではない 何かを為すための生 何かを為すことを求めなくなった生は 生ではない 永遠に生を引き延ばしても何も得られない 死なないだけでは生きているとはいえない それは何も生まない時間だから 残された時間がわずかなら 生を引き延ばすことよりも 何かをすることを選びたい どう生きたくて どう生きたか どう生きようとしたか それが大切 結果や長さは関係ないから 「唯一の選択」 自分がいなかったら きっと誰かがなんとかしてた だから自分はいらない? もしもの世界 でもそれを見た人はだれもいない だれにもつくることはできない だれにもできたはずのこと でもその場にいて その事を為せたのは 他ならぬ自分だと 良かろうが悪かろうが くさびになっていたのだと 世界のだれも否定できない 選択に 良いも悪いもない 良かったも悪かったも 正しいも誤りも 正しかったも間違っていたも 結果しか 人は見られないのだから そして 今 まだ この世界にいるということは 少なくとも 逃げていないのだから 自分の選択した結果から この世界から 「うちひしがれているあなたへ」 迷っていましたか 迷うなんて思いもしなかったことで 迷っていましたか それほどまでに ゆるせない思いがありましたか それほどに 大事な思いがありましたか 世界と闘うことは 結局 自分と闘うこと でたらめじゃ 傷だけしか残らない 迷ったままでは 取り落としたナイフでつま先を切ることになる 迷う刃は無力であるがゆえに 無力なものを無表情に傷つける でも 無力な者も 闘わなければならないときもある そのときはまちがえないようにね きみのための 闘いかたがあるから 誰に教えられたわけでもない闘いかたが できるよ きっと 「生きることの確固たる理由のなさにどうでもよさを感じるあなたへ」 死にたいなんて苦しみ悩むのは 生きることをすごく重いことだと思っているから それなら あなたが生まれたこと あなたが生きていることは どうでもいいなんて言ってしまえることだろうか 生きていることには意味がある 理由があるから生きていくんじゃなくて 生きてくことで意味が生まれていくんじゃないだろうか あなたが生きていく価値や意味にしたがるものたち 才能 なんて枯れる 信念 だってゆらぐ 力 だって衰える かもしれない そうなったら死んでしまうの? ちがうでしょう そんなあやふやな理由に頼らなくても生きてゆけるよね 生きていきたいから生きていくんだよね ちがうかな