<里親制度用語集>

里親制度に関係する特有の用語の覚え書き程度の用語集です。
(法律的には間違った言い回しもありますが、理解の助けになればと思います)

用語 解説・用例
ア行
愛着障害 反応性愛着障害:RAD(Reactive Attachment Disorder)とも表現される。
乳幼児の発育において、特定の養育者との愛着形成・信頼関係の構築が行えないことにより、その後の他者との信頼関係の構築に 困難を生じるといわれている。そのような状態を愛着障害という。
乳児院・家庭等でそのような状態にあった子どもが里親委託をされた際、その対応に障害に関する知識と対応技術が求められる。 また、そもそも愛着障害の状態にしないために、年齢の低い児童の措置は特定の定の養育者(里親)との愛着を結べる里親委託を原則にしていくことが有効との提言がされている。
委託 児童相談所から里親に対し、子ども(里子)の養育を依頼すること。里親側からすると「受託」するという言い方になる。
(例:児童相談所が里親に子どもを委託する。里親が児童相談所から里子を受託する。)
一時保護 児童相談所の判断により、いろいろな事情のある子どもを一時的に預かる行為。
一時保護所にて受け入れることが多いが、児童の年齢や特性、一時保護所の状況などにより、里親家庭・乳児院・児童養護施設などで受け入れることもある。
預かる期間は子どもの事情によってまちまち(数日の場合もあれば数週の場合もある)だが、原則2ヶ月以内とされている。その間に子どもが今後どこでどのように生活していくのかを児童相談所の児童福祉司が中心となって検討する。 里親宅への一時保護から継続してそのまま里親委託となる場合もある。
原則として親権者の同意を得て行われるが、児童虐待等の対応時に児童を危険から守るために同意を得ずに行う「緊急一時保護」というものもある。
一時保護所 いろいろな事情があって家庭を離れる子どもを一時的に預かる施設。児童相談所に併設されていることが多い。
児童に関する問題を検討した結果、今後の生活場所として里親家庭が適当との判断になればここから里親宅へ委託される子どももいる(家庭に戻る、児童養護施設へ入所するなどの方針になることもある)。
緊急の避難場所としての機能を持つが、純粋に養護の必要のある子どもだけでなく、非行・被虐待という背景を持った子どもも同じ空間で過ごすこと、子どもの入れ替わりが頻繁にあることなど、避難してきた子どもにとって安心できる落ち着いた空間にはなかなかならないという問題もある。
援助者 里親の負担軽減のために都道府県(政令指定都市、児童相談所設置市含む)から派遣される者。
里親・里親経験者の中から選定され、研修・登録のうえ里親からの相談、援助の求めに応じて派遣される。
具体的支援内容としては家事や養育の補助で、生活援助・養育相談など相互援助的活動を行う。
カ行
家族再統合 家族関係が不調になり親子が互いに安全・安心して過ごせない状態にある家族について、家族関係を再構築する取り組み。
児童相談所の児童福祉司をキーパーソンとして、親・子両方への支援が継続的に実施されることが多い。
どんな関係になれば再統合されたとみるかについては家族ごとに違い、必ずしも里親家庭や施設から自宅に戻ることがゴールではない。
家庭児童相談室 市や都道府県の福祉事務所に設置されている相談窓口、児童や家庭の問題に関する相談に対応する。家児相(かじそう)と略されることもある。
児童相談所に比べて設置数が多く、より身近な相談機関として、主に保育園の利用など子育て支援サービスで対応できたり、緊急の対応を要しない比較的軽微な相談に対応する。地域によっては里親認定申請の窓口が児童相談所ではなくここになっている場合もある。
緊急な対応を要する(虐待など)、心理・医学的判断を要するなど、より専門的な対応が必要な場合には児童相談所と連携して対応したり、児童相談所へ相談を引き継ぐことになる。
体制としては社会福祉主事や相談員が配置されているところが多いが、社会福祉士や児童心理司を配置しているところもある一方、非常勤職員のみの配置しかないところもあるなど、個々の人的資源の充実度には差があり、児童相談所を初めとした関係機関との連権に支障が生じている例もある。
季節里親 法律上の分類にはない里親の形態。学校の長期の休みや週末に、自宅に帰省できないなどの事情のある児童養護施設の子どもを里親宅で短期間受け入れるしくみ。家庭生活の体験をすること、子どもの将来の委託へのステップなどが目的。地域によって名称が異なる(例:週末里親、ボランティア里親、フレンドホーム、ショートルフランなど)。
ケアリーバー 社会的養護経験者、措置解除者(care leaver)。児童福祉のケアを離れた人のこと。里親制度を規定している児童福祉法の対象者は満18歳に達するまでの者とされていて、自立の準備ができている・いないにかかわらず公的な支援はそこで終わりになるのが原則。
里親委託には20歳になるまでの間の措置延長の制度はあるが、社会的養護のもとにあったという背景から生じるハンデに対しその後の青年期の支援も必要とされている。
子育て短期支援事業 一定の事由により、児童の養育が一時的に困難になった場合に児童を児童養護施設や乳児院、母子生活支援施設、里親家庭で預かる制度。実施主体・利用申込先は市町村。保護者の仕事、疾病、育児不安や育児疲れなどへの対応としての短期入所生活援助事業(ショートステイ)、平日の夜間や休日、緊急時等に対応する夜間養護等事業(トワイライトステイ)がある。
多くの市町村では児童養護施設等での預かりが多く、里親家庭へも預けている市町村は少数派なのが現状だが、里親家庭での預かりが広がってゆけばより身近な地域の子育て支援の資源としての里親・里親制度の理解促進にもつながると思われる。
サ行
里親 なんらかの事情により家庭で生活することのできない子どもを「児童福祉法に基づく里親制度」によって自宅などへ受け入れ家族という形で一緒に生活していく意思を持つ大人のこと。 <養育里親><専門里親><親族里親><養子縁組によって養親となることを希望する里親>の4つの区分がある。詳細はこちら
里親会 互いの養育の支援や、里親関連の研修会・行事の開催などを行う里親の集まり。
児童相談所の管轄地域ごとに組織されていることが多い。都道府県レベルで活動するものや、全国規模の組織である(財)全国里親会などもある。
里親サロン  里親宅や児童相談所などを会場として里親の相互交流を行う集まり。ベテラン里親や児童相談所の里親担当職員がコーディネーターとなって運営されていることが多い。
里子の養育に関する相談・情報交換、育児用品の貸し借りの仲立ち、養育の息抜き、里子同士の交流などの様々な活動が各地で行われている。
正式名称は「里親養育相互援助事業」という。
里親支援機関事業 里親制度の普及促進及び里親への児童の委託の推進、養育の支援を目的に実施される事業。
具体的には
・制度説明会や講演会による制度の広報、里親希望者の新規開拓
・里親に対する研修
・マッチングから委託までの調整支援
・里親家庭への訪問、援助者の派遣などによる養育の支援
・里親サロンの運営などによる里親等の相互交流の支援
などを行う。

実施するのは都道府県及び政令指定都市、児童相談所設置市だが適切に実施できると認めた者に委託して実施することもできる。 (地域の相談機関や乳児院や児童養護施設、里親関連NPO団体などを想定)

里親対応専門員 児童相談所で里親に関することを専門に行う職員。里子の養育に関する里親からの相談に応じたり、里親に対して必要な支援を行う。
地域によって若干名称に違いがあることもある(例:里親専門員、里親支援員等)
里親ファミリーホーム  里親認定を受けた夫婦によって運営されるグループホーム形式の養育里親の形態。 委託される児童の人数は4〜6人、里親としての養育経験などが指定の基準となっている。
里親にとっては持ち出しの多い経費(住居費、人件費)に対する公的な支援、養育援助者・補助者の協力による養育体制の充実・安定化などのメリットがある。 児童にとっては里親の受け入れ先の枠が増えること、兄弟的な関係を持てる児童がいることによる里親家庭へのなじみやすさなどのメリットがある。
里親委託でありながら、小さな施設のような形態をとることで里親委託に消極的な保護者の同意が得やすいこともメリットとしてあげられる。
児童養護施設を新設するよりも低コストかつ小回りのきく運営が可能。ベテラン里親による里親・地域の子育ての支援の役を担うことも期待される。
2006年10月時点で37のファミリーホームがある。各自治体(北海道、宮城県、茨城県、群馬県、千葉県、栃木県、東京都、横浜市、川崎市、福岡市など)ごとに規定が定められて運用が行われていたが、平成20年の改正児童福祉法により「小規模住居型児童養育事業」として制度化された。
里子 「児童福祉法に基づく里親制度」によって里親家庭で生活している0歳から18歳までの児童のこと。 法律上は里子という名称はないが、里親と対になる言葉として広く使用されている。公的には「里親に委託されている児童」という名称が国の統計等で使われている。
里子会  里子・元里子によって構成される里子の相互援助・悩み相談などの里子支援を目的とした団体。地域の里親会や関係者の支援を受けるなどして各地で活動が行われている。
全国組織である全国里子会「さくらネットワーク」は2001年に発足した。里親委託終了後の自立、進路選択などの里子特有の問題についての研究、海外の視察なども行っている。
賛助会・賛助会員 里親会の活動主旨に賛同し、支援をする人の集まり、または個人(後援会という名称を用いる場合もある)。
里親会の参加資格は「里親であること」と規定されていることが多い、しかし里親ではなくとも里親制度・里親会の支援をしたいという人の気持ちの受け入れ先となる組織として賛助会が設けられていることがある。
個人・団体・法人などの資格区分を設けていたり、会費(年会費であることが多い)の額や口数に区別を行っているところもある。

当サイト調べでは以下の賛助会を確認している。
(地域)          (会費等)
東京養育家庭の会 : 2000円
神奈川県里親会    : 個人1,000円2口から、団体10,000円1口から
ふじ虹の会       : 2000円1口から
岐阜地方里親会  : 2000円1口から
奈良県里親会   : 1000円1口から
京都市里親会   : 3000円
沖縄県里親会   : 個人2000円、法人・団体10,000円

実親(じつおや) 里子の戸籍上の親のこと、養親や里親に相対する言葉として使われる(「生物学上の親」、「産みの親」などとも)。
親権者である実親の同意がなければ原則的には里親委託は行えない。
実親と里子との面会、里子の実親宅への外泊、家庭復帰に向けた検討、保険証の更新など児童相談所が里親と実親の間に入って様々な調整をすることが多い。
実親の同意 親権者である実親による里親委託を承諾する意思表示のこと、同意がなければ原則的には里親委託は行えない。
「自分で育てることは無理だが、(自分よりも)里親に子どもがなつくのは嫌」「施設ならいいが、里親だと子どもをとられてしまう(その家を自分の家と思ってしまう)から嫌」など、親としての不安な心情から同意をためらう事例も見受けられる。里親委託によって愛着関係の形成が保障されることは、児童にとってその後の対人関係の大切な基礎となること、家庭復帰した際の親子関係の再構築にも資することを説明するなどして理解を得る取り組みが必要。
児童心理司 児童相談所に配置される心理学の専門知識・技術を持った職員(以前は心理判定員という名称だった)、大学(院)において心理学を専攻した者などから採用される。面接や心理検査、心理療法を用いたカウンセリングなどを行い、児童相談所に寄せられた相談に対応する。
療育手帳の交付の際の判定や、重大事件発生時の学校での児童・職員等の心理ケアにあたることもある。
児童福祉司とチームを組んで相談に対応することが多いが、児童福祉司に比べてその配置人数が少ないことから適正な配置が望まれている。
児童相談所 児童福祉法に基づいて全ての都道府県・政令指定都市(および一部の市)に設置されている行政機関、児相(じそう)と略されることもある。
里親へ子どもを委託する決定をするのはここ。里子の養育について里親を支援する役割も担っている。里親会の事務局が児童相談所内に置かれていることも多い。
児童手当 児童手当法に基づいて児童を養育している者に支給される手当。児童の健やかな成長のために使用することが法で定められている。
以前は条件つきで実親に支給されていたが、法改正により平成24年度分からは児童を養育している里親へ支給されることとなった(平成23年10月〜の子ども手当特別措置法の制度を継承した形)
里親は児童手当を児童の名義の口座を開設し、他の手当等とは区別して管理するよう定められており、措置解除となる際にはその後児童の監護者となる者に引き渡すこととなる。
児童福祉司 児童相談所に配置される児童の福祉に関する事務を行う職員、ケースワーカーとも呼ばれる。法律に定められた教育課程を修了した者、医師・社会福祉士等の資格を持つ者、社会福祉主事として2年以上児童福祉の仕事に従事した者という条件がある。
児童相談所に寄せられるあらゆる相談(養護、非行、障害、不登校など)に対応し、調査・診断・指導・助言を行う。
里親制度にかかわることとしては認定時の調査、里子の委託、委託した里親・里子への助言・支援なども担う。
虐待対応などの職務もあり、高度な専門性が要求されるが、専門職として採用・配置を行っている児童相談所もあれば、一般事務職が人事異動で配置される児童相談所もあるなどその体制は自治体によって様々である。休日・深夜を問わない24時間体制で虐待相談に対応することが求められており、慢性的な人手不足と職員の疲弊・燃え尽きなどが問題点として指摘されている。
児童福祉審議会  児童福祉法に定められた児童に関することを審議する機関。その委員は知事や市長によって任命される(学識経験者、福祉分野関係者、弁護士などが多い)。
審議の対象事項の1つとして里親の認定があり、児童相談所の訪問調査などの結果がここで審議にかけられて認定を行うか否かの判断が行われる。
審議会が定期的に開催される自治体もあれば、審議すべき案件が生じたときに随時開催する自治体もあるので同じ時期に里親認定申請をしても、認定されるまでの期間がまちまちになることがある。
児童虐待の事案などで、施設入所に関し、行政(児童相談所)と親の意見が一致しない(親が施設入所に同意しない)場合に委員の意見を聞く場でもある。
児童養護施設 家庭で生活できない事情のある子どもの受け入れ先の一つ。一般的に「施設」という言葉で表されるところの正式名称。おおむね2歳から18歳の子どもが、児童指導員や保育士の指導のもと、集団で生活している。
1つの建物で定員が数十人〜100人という大規模施設(大舎制)、同一の敷地内にいくつかの定員10人程度の小規模施設(小舎制)を配置したもの、地域の一般住宅を利用して6人程度の児童が職員と生活するものなどの種類がある。
ここで生活している子どもが児童相談所の判断で里親のところへ委託されることもある。
子どもの生活の様子や対処の仕方などを学ぶ、子どもとの係わりの中で受け入れた後の生活イメージを持つ、などを目的とする里親の研修を行う場にもなる。
社会的養護 保護者がいなかったり、不適切な養育環境にある児童に対し、社会制度として提供される養育環境のこと。児童養護施設などの施設養護と里親制度や養子縁組制度による家庭養護の2つに分けられる。
受診券 里子が医療機関を受診する際に窓口へ提示する書類。これにより窓口での費用負担は発生しない(児童相談所へ請求が回る)。
里子は実親の健康保険に入っているので受診の際には実親の加入している健康保険の遠隔地保険証(里子個人の保険証カードがあればそちら)も併せて提示する。様々な事情で実親の保険証が使えないケースがあり、その場合は受診券のみの提示で受診することになる(児童相談所へ保険分も請求が回る)。
医療機関によっては受診券を扱うことが少なかったり、ほとんどないというところもあるので初診時やかかりつけ医を決める際にはあらかじめ受診券の意味するところや請求方法について説明するか、児童相談所へ問い合わせてもらうよう依頼しておくとよい。 里子の戸籍上の名前が記載されているので、通称名で里親の苗字を名乗っていて真実告知・養子縁組をしていない場合、里子が「この苗字って何?」となることがある。
受診券・保険証は里親が管理し、里子だけで受診させることを避けること、医療機関に院内での呼び出しなどで通称名を使用してもらうことを依頼するなどの対応が必要。
守秘義務 ある一定の職業・職務に就いている者・就いていた者に課せられる「職務の中で知りえた秘密を漏らしてはならない」=秘密を守る義務。
里親については厚生労働省令「里親が行う養育に関する最低基準」の第12条「秘密保持」の項で「里親は、正当な理由なく、その業務上知り得た委託児童又はその家族の秘密を漏らしてはならない」と定められている(公務員や弁護士、保健師、看護士、民生委員・児童委員など もそれぞれの法律で規定されている)。
里親は委託された児童やその関係者の抱える様々な事情(秘密)を知ることになる。養育をしてゆくうえでそういった情報は必要であるが、プライバシーを守るためにそのことを伝える必要のない者に漏らしてはいけない(里親の家族、里親同士でも同じ)。
そういった内容を聞かれた際には「守秘義務がありますので」と答える姿勢でいることが児童を守り、里親への信頼を高めることにつながる。
真実告知 乳児期などに里子を受託し、里親であることを告げずに里子を育ててきた里親が里子に「自分は里親であり、生みの親は別にいる」という事実を告げること。
告げる時期や伝え方、その後のフォローなどをよく検討しを適切に行うことが必要とされる。
ただ単に事実を伝えることが目的ではなく、子どもが自分の生い立ちを受け入れ、現在の自分を肯定することの手助けとしても必要とされる。
里子が里親以外の人から自分が里子であることを初めて聞かされたり、自ら知った後に後追いで説明するよりも、里親が適切と思う時期に里親自身から落ち着いた状況できちんと話をするほうが里子としての受け止めもしやすいとされる。
ソーシャル・インクルージョン 問題を抱え、社会から排除される状況にある人々を、社会の構成員として包み込んで支えあう、多様性を持った社会を目指す理念のこと。もともとは欧州で広まった概念。社会的包摂、社会的包容と訳される。
従来の福祉施策の枠組みは、対象者に対して保護的に提供されていた。それに対し、種類や大小の差はあれ、社会の中で人は何かしらの課題を抱えているのだから、包括的に社会全体で支えあうという枠組みへの転換といえる。児童福祉分野的に言い換えれば「子育ての社会化」とも言える。
平成27年4月施行の子ども・子育て支援新制度もこの理念に基づいている。
タ行
試し行動 委託された当初によく見られる里子の行動。最初は新しい環境ゆえに緊張して「おとなしい子」でいたが、次第に慣れてくると「この人(里親)はどこまで信頼できる人なのか」を試すかのように「困った子」ととられるような行動をすることがある。
子育てに抱いていた楽しい生活のイメージがいきなり変わりかねない瞬間だが、里子にとっては親や施設の担当者との別れや、住みなれた地域を離れて新しい環境に来ることによる寂しさと、どんな自分であっても受け入れてほしいという無意識の感情から生まれる不安定さともとらえることができ、ここを乗り越えることが里親・里子として今後の信頼関係を築くために大切なときとも言える。 できるだけ行動を受容しつつ、信頼関係を築きながら適切な行動について伝えていく対応が望ましい。

<試し行動の例:過食、赤ちゃん返り、強い後追い(里親から離れない)、感情の爆発、注意されても同じ行動(里親が困ること)を繰り返す>

地域里親 家庭を離れざるを得なくなった児童がなるべく生活環境を変えずに済むように、学区単位等の「地域」に児童を受け入れる里親家庭を確保することが望ましいとされる考え方。
自らには何の責任もない事情から家庭を離れることにより両親や家庭との絆を失う児童にとって、今まで生活してきた地域の絆(顔見知りの大人や学校の友人等とのつながり)を保持することは大きな支えとなる。
通称名 戸籍上の氏名(本名)ではないが日常生活で使用している氏名のこと。里子の場合は戸籍上の姓ではなく、里親の姓を通称名として名乗るケースがある。
日常生活では「私の名前は○○☆☆です」と言えばそれで問題なく「あなたは○○☆☆さんですね」となるが、公式な書類(健康保険証、パスポート、運転免許証、資格免許状など)には原則として戸籍上の名前が記載されることになる。
小学校の入学時の入学通知書の送付のときぐらいから意識されることが多いので、事前に教育委員会事務局に行き、里子であること、通称名を使用したいことを説明しておく必要がある。 (地域によっては規定どおりの運用にこだわり、なかなか理解が得られないところもある)。 正規の書類(卒業証書など)は戸籍上の氏名で作っておき、通称名の書類を別に作って本人や家族に渡してくれるという対応がされることもある。
真実告知をしていない場合など家庭の外からその事実が判明するきっかけにもなるので、里子への影響を考えて児童相談所等と連携して関係機関と協議しておくことが必要。
ナ行
乳児院 家庭で生活できない事情のある子どもの受け入れ先の一つ。児童養護施設よりも低年齢の子ども生活している。おおむね0歳から2歳の子どもが保育士による養育を受けて、集団で生活している。
ここで生活している子どもが児童相談所の判断で里親のところへ委託されることもある。
子どもの生活の様子や対処の仕方などを学ぶ、子どもとの係わりの中で受け入れた後の生活イメージを持つ、などを目的とする里親の研修を行う場にもなる。
ネグレクト(neglect) 養育の放棄や怠慢のこと、児童虐待の1類型として定義されている。生活・情緒・医療・保健・教育などの必要な養育が行われない状態を指す。 児童が親によるネグレクト状態にある場合、社会がその養育を代替的に担う必要が生じる。
ノーマライゼーション(normalization) 障害がある人が、地域社会の中で障害のない人と同じ生活を送ることは当然の権利という、北欧で生まれた考え方。
障害のある人だけに限られたことではなく、養護を必要としている子どもにも同じように適用されるべき考え方である。
それまで生活していた家庭で生活できなくなった子どもには、他の子どもと同じように、「家庭」で生活する権利があり、「家庭」においてさまざまな日常生活経験を積むことを保障されるものである(心身の治療のための施設入所期間は別途保障されることが必要)。
里親制度の推進は、この子どもの当然の権利を保障するものであり、ノーマライゼーションの実現に必要な方策である。
ハ行
パーマネンシー・プランニング
(permanency planning)
 里親制度においては、児童にとって永続的(継続的・安定的)な養育関係を提供するプロセスを意味する。実父母のいる家庭への復帰や、里親などの養育者との養子縁組などによって、血縁関係や法的関係の確保された状態を提供していくことが、児童の自立支援の最終的な目標とされる考え方。
 アメリカにおける措置基準では、児童が要保護状態になった際、家庭復帰が望めなければ、養子縁組→親族・養育里親→地域の小規模児童養護施設という順に検討が行われ、施設入所は他に手段のない場合の最終的な選択肢とされている。
フォスターケア
(foster care)
里親制度の英訳。[foster]には「血縁ではなく、養育関係の」という意味がある。里親の英語訳は foster parent、里子は foster childとなる。 日本における里親制度よりも外国におけるフォスターケアの認知度は高く、アメリカでは75万人ほどの児童がこの制度のもとで養育されている。
福祉行政報告例 厚生労働省が行っている統計調査のうちの福祉分野のもの。里親関連の内容は児童福祉分野の中にあり、「里親数」「里親委託児童数」「委託解除児童数」などの情報が毎年度末の状態で把握できる。結果が公表されるのは翌年度の12月ごろ。
厚生労働省サイト
ペアレントトレーニング 子育てにおいて親が果たすべき役割を理論をもとに体系的に学び、具体的な対応技術を身につけるプログラムのことをいう。
発達障害のある子どもに対する対処にも有効性が高く、トレーナーによる講座・ワークショップなどが各地で開催されている。
マ行
マッチング
里親と、その里親へ委託を検討されている児童について、委託を行うことが適当かどうかを検討・判断し、委託にむけた調整をすること。
児童については養育を必要とする期間・自宅に戻れるために必要な条件・必要なケア・実親との関係などの条件を、里親については 養育に対してどのような希望を持っているか・里親制度についての理解の度合い・実子や既に委託されている児童と委託を検討している児童の関係性・受け入れ態勢などの条件を検討する。
互いの条件が適合すると判断されれば両者の引き合わせ、面会、外出、外泊などの段階を経て最終的な委託の決定を行う。
マッチングにあたっては上記のような客観的要素だけでなく、里親と児童の相性といった当人同士にしかわからない要素もあるので双方の心情についての配慮も必要である。また、実親にも里親制度の趣旨、委託の目的などを説明し、誤解による里親委託拒否などが起きないような対応が必要である。
ヤ行
養育 子どもを育てること。養育の放棄・怠慢(食事を与えない、非衛生的な環境に置く、必要な医療を受けさせない等)はネグレクトとも言われ、児童虐待にあたる。
養育家庭 里親家庭の別の表現。
東京都は里親を大きく「養育家庭(愛称:ほっとファミリー)」「専門養育家庭」「親族里親」「養子縁組里親」の4つに区分して表現している。 鳥取県でも一部養育家庭の名称を使用している。
1996年の全国里親会による「里親事業推進のための提言」を初めとして、研究者などからも里親の名称を「養育家庭」に変更することが提案されている。
社会的な認知における里親と養子縁組との同一視を防ぎ、名称独占の問題の解決の一手段になりうると考えられる。
養子縁組 親子関係のない者(実親=実子でない)同士が法律上、親子関係を成立させるための手続き。親子関係のない2者はこの手続きによって養親=養子という関係になる。
実親と実子の関係が終了する「特別養子縁組」と、実親と実子の関係が存続する「普通養子縁組」の2種類の手続きがあり、その条件や法律上の取り扱いが異なる。
(家庭養護促進協会・大阪事務所のサイト に分かりやすい比較表があります。)
ラ行
ルーツ探し 「自分はどこから来た何者なのか?」真実告知を受けた際などに、このような自分のルーツ(rotes:物事の起源、由来の意)を知りたいと考え、 かかわりのある児童相談所や役所、施設や病院関係者などの記録・記憶などをたどっていく行為。
実親が自分を産んだが育てられなかった事情や自分が現在の境遇にいたるまでの過程を知ることはアイデンティティの確立を支えることになる。その一方で実親への怒り・否定の感情を抱いたり、里親へその感情をぶつけてくることもあるので、児童の心情を理解・受容して援助していくことが必要である。

注意すべき点として、児童相談所における児童の記録は児童の年齢が25歳になるまでは保存される方針になっているが、その後の扱いは自治体ごとにまちまちで、児童が調べたくても調べられないといった事態が生じることもある。そのため、児童が自分のルーツ探しをしたいという権利を保障するために、里親がその事情を把握しておくなど、児童相談所との間で連携をとっておくことも有効である。
レスパイト・ケア 里子を養育している里親の研修への参加や一時的な休息などのために児童養護施設や他の里親、民間団体などが一時的に里子の養育を行う制度。

<里親制度における課題>

管理人の考える里親制度における課題を提示しています。

 

里親制度の
課題など
解説
自立の支援
(大学・専門学校等への進学問題)
児童福祉法に規定された「児童」とは年齢が満18歳に満たない者である。
里親制度が児童福祉法に基づくものであるので、里親に委託されることができるのも18歳の誕生日を迎えるまでということになる。 すると「それじゃあ高校3年生の途中で里親のところにはいられなくなるの?」という疑問も生じるが、 「満20歳に達するまで引続き委託することができる」 という別の規定があるため、高校卒業までは里親のもとで生活ができるようになっている。

しかし、高校を卒業してすぐに自立して生活ができるかと問われたらなかなかに不安が大きいのではないだろうか。
学びたい、資格をとりたいなどの理由で大学・短大・専門学校に行きたいという思いがあっても進学のための資金を高校生が用意するのは難しい。 多くの子どもは親の援助を受けて進学しているのが現状だが、里親がその費用まで負担することは何も制度上の支援がないため難しい。善意で捻出 しようとしてくれる里親もいるだろうが、その経済的負担はかなり重いし、里親さんにそこまでしてもらうことはできないと気をつかって 「就職する」と自分の気持ちを抑えてしまう子どももいるのではないだろうか。

自立のための学歴・資格などを周りの子どもと同じように身に付けることへの支援は、里親のもとで生活する児童に限らず、児童養護施設入所児童など社会的養護を必要とする児童の全てに関わる問題である。

名称独占問題 日本において法律において定められた「里親」は児童福祉法によって規定されている「人間の里親」だけとされている。
しかし「里親」という名称を他の対象に使ってはならないという「名称独占」の定めはなく、他にも多くの対象に対して「里親」という名称は使用されている。
(例)
・犬、猫等の動物の飼い主探しの際に引き取り先を里親と呼ぶ。
・特定の動物の保護のための寄付金などを拠出する者を○○里親と呼ぶ。
・道路や公園、河川、公共施設などを地域の住民・団体が清掃・管理などをする取り決めを行う際に「道路里親」「公園里親」などの名称で「養子縁組(adopt)」をする。

里親という言葉をどのように用いるのかは個々人の自由かもしれないが、それによって複雑な思いを抱く里親・里子の声も聞かれることから、何らかの配慮が必要と思われる。

実親支援とオープン・アドプション(open adoption) 里親制度の成立した時代には里親が養育する児童は実親との関係が全く不明か、ほとんどないことが多かった。しかし、最近は養護を必要とする理由が実親との関係の不調という児童も多い。
虐待などで保護された児童の実親から里親に対して負の感情が向けられたり、実親がいるのに里親のもとで生活していることについて里子や関係者への説明などの問題が生じてくる。

これらの問題について、アメリカで1970年代に始まり、養子縁組の1つの形として実績がある「オープン・アドプション(open adoption)」が参考になる。直訳すれば「開かれた養子縁組」。意訳すれば「養親との養子縁組後も実親との交流を持つ養子縁組」となる。
この手法を応用して、里親制度の中では具体的な方策のなかった「実親への支援」を通じて「実親から里親への直接的影響の不安の解消」、「実親が子どもの状況を知ることで安心感を得られる」、「里子が実親との関係を継続できる」などの効果が見込まれる。
親子の関係が改善されて家庭復帰ができる、里親が養育を担う期間が限定されることで里親委託される児童を増やせる、という波及効果が望めることから 児童相談所が担うべき役割だが、現在の体制のままでは困難。かといって里親が実親支援まで行うことも負担が大きいと思われる。

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