「抱きしめてあげられるように」
みつめていてくれる人がいるから
頑張りを届けたい人がいるから
自分がここにいることを
感じられて
確かめられて
安心できて
でも
いつまでもそれでいいの?
その人がいれば生きて行けると思うのは
その人がいないと生きて行けないということ
いなくなったら
あなたもいなくなるか
楽しい思い出にすがって
過去を反芻して生きていくの
深く心を交わした人はいますか
植物でも動物でも
あなたは愛情を注いでいたのなら
あなたが望んでいたのは何ですか
かわいいから
いとおしいから
そして育つ様子がうれしいからではなかったですか
いつか何かの形で
避けられぬ別れの時がきたら
あなたは涙を笑顔の上に浮かべることができますか
「さよなら」
に
「あなたはきっとだいじょうぶね」
と成長をたのもしく思う気持ちを重ねることができますか
どんなに頼りなげでも
自分が注いだ愛情が相手の中で強さになって残っていることを
感じられますか
あなたが大切な誰かにもらった強さを
その人に伝えてあげられましたか
安心して眠りにつき
温かさの中で目覚めた日々は
うわべだけの感情の羅列でしたか
心に残るものはありませんでしたか
悲しみもあったでしょう
痛みもあったでしょう
忘れたいこともあるでしょう
でもそれがあなたの過去
捨てられない深層の思い
楽しい思いでと一緒のところにあるもの
片方だけ切り捨てて
忘れたつもりになっていても
いびつな心ができあがるだけ
楽しい思い出だけが
大切な人との日々が育んだものじゃないから
ごまかし続けていくの
自分にも
自分の大切なひとにも
本当のことを
自分の全部を話せないまま接していくの
自分で編んだ虫食いだらけの過去の記録
そんなものを誰にみせたいの
今のあなたを1冊の本にしたなら
あるのは
最後のページの
何の魅力もないプロフィール
本文のないあなたのそれを誰が読むっていうの?
あなたが読んでほしいことは
本当にそこにあるの
今までを受け入れられないで
自分の今を未来を受け入れていけるの
それとも虫食いのページをまた延々と綴っていくの
そしてどこにたどり着けるの
踏みしめるのさえ躊躇してしまう薄氷のような自分の今までを
おそるおそるふりかえりつつ歩き続けていけるの
もっと過酷な現実が
隠し続けてきた過去にひっかかってきたとき
もちこたえることができますか
力尽き落ちて行きそうなときに
自分を支えるものが心にありますか
痛みのない浸るだけの思い出を
今 大切に思うものよりも選びますか
それは
今ここにいるあなたの思いよりも大切ですか
痛みも悲しみも何一つ欠けることなく持っているかけがえのないあなたより
大切なものですか
笑顔は楽しい思い出の寄せ集めじゃつくれない
辛いことも嫌なことも全部詰め込んで
初めて自然に浮かぶものだと思う
辛いことをムリヤリ忘れてつくれるものじゃない
忘れたことにしてごまかしてつくれるものじゃない
ぜんぶのりこえて
笑えたら
きっと幸せに向かって歩き出せるから
思い出のあの人に すがる泣き顔じゃなく
笑顔を見せたいなら
笑顔で会いたいなら
遠い季節から手を振りたいなら
正直に
強くなろう
誰でも
わたしなんかって 引け目なく
できないって 謝らず
抱きしめてあげられるように
いつも省みることはない
忙しくて考えられないこともあると思う
でも忘れることは何も生み出さない
ちゃんと抱いていかないと
なにもなかったことにはできないから
だって何かはあったんだから
忘れたらどうにもできなくなってしまうから
そうでなければ
正直になれない
誰にも
強くなれない
辛さに
いつも負けてしまう
|