番外編その2

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貸出しカードを追いかけて


現在のような電算化された貸出し管理システムができる前は 本の裏表紙の内側あたりに紙のポケットに入っている貸出しカード というものがあって、そこに自分の名前を書き込んでいく形式に なっていました。
当然、自分の前に誰が借りたのかがわかるわけで、昨今言われる 個人情報の漏洩の問題をはらんでいるわけです。 しかし私はこれといった危機感や自分がどんな本を借りたかなど 誰にわかってもかまわないと思っていましたし、今も別にと思います。

甘い考えといわれるかもしれませんが、現在のように簡単にデータ検索 などできない時代です。自分の名前を発見するのはやみくもに 探した場合、かなりの偶然です。誰かが秘密をつかもうなどと考えても そうそう目的を達することはできません。 逆に言えば私の名前をみつけられるのは同じ本に興味を持った人な わけで、そう悪い人じゃないんじゃないか、何か通じるものがあるんじゃ ないかと思ったりするのです。 さらに逆の立場で考えれば自分が本を選んだときに目にする名前の人物はまた 何か通じる人じゃないかと思うわけで、何かドラマがはじまりそうな気がする のです。
(「耳をすませば」という作品はそういうもののようですね)
まだ見ぬ仲間の存在がまた一つ別の楽しみだったわけです。

事実、私が高校のころお世話になっていた先輩方に出会い、 より深いおつきあいになったきっかけは貸し出しカードでした。
「あ、あの人、これも読んでる」
「あ、この本はみんな読んでる」
「お、これは読んでないぞ!(と思ったら2枚目のカードでやっぱり 自分が最後だったりすること多し)」
また、多くの人が読んでる本は「おもしろそうだな」との期待がわきますし 古いわりに誰も借りてない本はちょっとためらうものがありました。時間の 限られた自由時間を無為にしないためにも1つの有効な判断基準だったわけです。

借りる人のカードと合わせて管理しているところ(学校図書館はそうでした) もあり、そこでは自分の貸し出し履歴が一目でわかったため、管理する側から すれば情報をにぎっていたわけですが、それを悪用しようとする人はそう いませんでした、何せ図書委員による当番制は半ば崩壊し、一部のメンバー が妙なプロ意識を持って運営しており「秘密をのぞくのはいけない」 という極めてあたりまえかつ真面目な意識が浸透していたので。

あのカードは今も誰かの期待を起こさせてるかなと思ったりするわけです。 本のもつ読み手の歴史という暖かみ、それがバーコードとメモリーの中の電気 信号に成り代わったことが少し寂しいなと思うのです。


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