その1

「 Libraryのトップに戻る ] 「 次に進む ]

開館5分前:図書館の季節


開館5分前。
図書館の前、いや正確に言うなら図書館の周りには長蛇の列ができている。 最後尾からは入り口さえ見えない。 「うそー!なんでこんな並んでんのー!?」と自転車に乗ったまま叫ぶ 図書館初心者であろう女子高生の横をすりぬけ、 ドアが開く瞬間を待つというより 列が前に動き出すのを待っている人の後につく。 別に誰よりも先んじて入りたいわけではないので並ばずともよいとは思 うのだが、列に入っていないと 「横入りする瞬間をみはからっている奴」と思われそうで嫌なので わざわざ並んでしまう。 開館時間に集まる人々が受け継いでいる暗黙のルールである。 そもそも何故こんなに列を作るほど多くの人がいるのかというと おそらく「図書館の季節」だからだろう「旬」と言ってもいい。

  図書館の季節とは夏である。それも7月後半から8月31日きっかり まで。幼稚園以上高校生以下の年齢の方々の夏休み期間である。 旬と言っても混むだけである。あと、騒がしい。 幼稚園児は追いかけっこ。たまに転ぶ、そして泣く。 小学生は自由研究の会議。職員さんに対しあまりにもな質問をしては「自分で調べようね」といわれ続ける。 読書感想文の書籍代を浮かそうとしている中高生 (しかし彼らが狙う課題図書や話題の本は往々にして図書館を普段から利用している 同年代のツワモノに夏休み前に押さえられている)。夏期講習に行かない彼らは自習室代わりにも使う。 受験生は一日中指定席と仮した場所で黙々と参考書をめくる。

  一つの台風とも言うべき光景である。8時ごろに荷物だけ置きに来て(開館は10時) 列の最前列を確保する 剛の者もいるという噂を聞いたことがあるが、この混み具合と 「ここに荷物を放置して盗難などがあっても図書館としては責任を負えません」 との注意書きを見るとあながち噂だけとも言えないものがある。   列が動く。ドアが開いたのだろう、遠くから「走らないでくださーい」と抑え目に叫ぶ声が 聞こえる。学生の席取り合戦で今日もこの図書館の1日が始まった。 しかし、もう子どもとも言えない年齢になって「走らないで」なんて言われてる彼ら彼女ら の行動にはため息が出かける。 それに遅れまいと堂々と横入りしてゆく同じくらいの学生さんたちをみるにつけ、いよいよ ため息は耐久限界を迎えようとするのだが、並ばなければならないという暗黙のルールは あくまで暗黙なのであり、私にできるのは「危ないよ〜」と思うことだけなのだった。

  しかし何にせよ9月になれば彼ら彼女らはぱったりと姿を消すのだから やはりこれは夏の風物詩なのだろう。 異常気象が騒がれるこの頃だけに、苦々しく思って嵐が去るのを待ちわびるよりもこの光景に 夏を感じてみるのが風流かと。

  ただ、本物の嵐のようにそこら中にゴミをちらかすのは勘弁してほしい。 あと列の中で中間テストの話をしながらタバコ吸うのはいかがなものかと思った。

     


「 Libraryのトップに戻る ] 「 次に進む ]