放課後の遺言状


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遺言状を書いてみようか。
僕はその夜そんなことを思いついた。
彼女がなぜ遺言状を書いているのか。彼女の話を聞いただけでは消しきれなかった遺言状を書くということに感じた違和感。その正体を確かめてみたい。そのためには遺言状を書くという状況に身を置き、同じ気持ちになってみるのが近道のはずだ。実際に自分で書いてみれば何かが見えてくるかもしれない。

彼女のように辞書を置き、シャープペンシルを握り、姿勢を正して便箋に向かう。
自殺するわけではないから、何か不慮の事故のためという設定。
、、、そういえばそもそも遺言って何だろう、、、うーん。
遺言を辞書で引くと、、、
言い残すこと、、、か。
あるか?
今親に言い残すたこと、、、ない。
仲間にも、、、ないな。
言いたいことはだいたい言っているし、いざ改まって何かってことも、、、貯金なんてないし財産なんてないしなぁ。
臓器移植のことなんかも考えたことないし、、、やっぱり遺言ってあんまり書くことないよな、、、
自殺するなら恨み言なんかが溢れるのかもしれない、言いたくても言えなかったことをせめて最後に、、、か。

、、、?待てよ、言いたくても言えなかった?
、、、遺書に書くことがあるってことは
、、、言い残したことがあるってことは
今言えてないことがあるってこと?
それを死んだから言う、、、
死んだから言える?
死ななくちゃ言えない?
、、、あのとき感じた寂しさってこれなんじゃ、、、彼女は「今」言いたいことばを言えてないじゃないだろうか、、、
死ぬまで抱えてゆくことば
感謝のことば
別れのことば
確かに、、、その場で、死という場面でしか言えない言葉かもしれない。
人は生まれるときと死ぬときの2度、必ず主役になれるって話を聞いたことがある。控えめな彼女はその2回目の主役になれるときだけに自分の思いを現すことを自分に許すんだろうか

ひとり、そのときのために言えない想いを遺書にしたためている
仲間、友達、家族、、、
今、大切な人に話さない
いや、話せないのかな、、、
人づきあいが苦手、、、でも思いは秘めている、、、
思いの行き場がないってことか、、、
なるほど、これはつらいな、、、

彼女の遺言状は言い残すんじゃなくて今、言えない言葉の集まり
やっぱり自殺する人の遺言状の臭いがする。
あの落ち着きは、虚勢?何か無理をしている、素直な感じがしない、何かもろく、危うい気がするのはそういうことからなのかな。
どこか話せる相手がいれば、話せる場所があれば、、、。
考えた末、僕はある提案を由紀ちゃんにすることにした。



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