放課後の遺言状

9

「、、、わかりました」
私は視線を合わせないまま、差し出された手紙のようなものを受け取った。
これで終わりにしよう、図書館にはもう来られないけど、いい。また前みたいにもどるだけ。
何もない日が続けばそれでいい。
和紙を開くともう1枚包み紙があった、こちらは紐で閉じられている。何だろうこの仰々しさは。
するすると紐を解き、紙を開くとようやく便箋が姿を表した。
4つに折られた1枚きりのもののようだ。
なぜか緊張する。指先が少しいうことをきいてくれない。
ばかばかしい、何も考えずに開いてしまえばいいのに、これで終わるのだから。
パラ、、、


遺書

涼風咲子 様

もっとあなたと話したかった


何、、、これ?
もっと、、、私と話したかった?

「これ、一体何のつもり、、、」
そう言いかけたとき、
「?!」
急に風が吹いた。とっさに目を閉じて手紙をにぎったままの手で顔をかばった。
薄目をあけて風の吹いてきた方を向くと夕日の光が差し込み、バタバタというカーテンのはためく音がしているする、さっきまでは閉まっていたカウンターの後ろの窓が開いているのだ。
気をとりなおし手紙のことを問いただそうとした、、、が、
いない。
あの人の姿がない。
カウンターの出入口には私がいた、ここを通らずにここから出ることはできない。
出られるところは、、、あの窓、、、
!
私ははっとして手紙を見た
「遺書」
、、、そんなそれじゃ、まさか、、、でも、何で、、、?
ちょっと、、ちょっと待ってよ、、、どうすればいいの、、、
何で、、、何で私にこんなもの、、、

窓までの距離は1メートルもない。
一歩踏み出し、窓の外を見れば、、、わかる、、、
でも、
でも、、、
怖い
カチカチ、、、
前歯が鳴っている、、、腕が、、、足が、、、動かない
私、、、震えている、、、いやだ、怖い、怖いよ、見たくないよ、、、

私は窓から必死で離れようとした、しびれたように自由のきかない左足をなんとか少し後ろに引いたとき
ガクン!
不意に右ヒザが折れた
体が右前方、窓の方へと倒れてゆく。
声をあげようとしたが喉すらひきつったように動かない
スローモーションのように銀色の窓のレールが目前に迫ってくる、
いけない、、、よけなくちゃ、
そう思うものの体の自由はまったくきかないままだ、まるで夢の中の出来事のように思考だけがぐるぐると動いているけれど、それすら鈍くなってきているような気がする。目を閉じる方法さえ忘れてしまったみたい、、、
ああ、、、どうしよう、、、

ガクン!
強い衝撃が走った
痛みは、、、、ない
感覚まで麻痺しているのだろうか、血はでてないかな、、、ブレザー、、、夏休みにクリーニングしたばかりだから汚したくなかったな、、、。そんなことを思っていた、けれどよく見ると私と窓の間にはまだ余裕があった。
なぜだろう。
「、、!、、、 めん!ごめん!」
下の方から誰かの声がする。
聞いたことがあるような、、、
「ごめん、驚かせすぎた!、、、本当にごめん!、、、涼風さん?涼風さん!!」
私の名前を呼んでいる。私を知っている人みたいだ、、、えーと、、、誰かな、、、
とすっ
背中に感覚が戻った。そして体全体、続いて意識がはっきりしてくる。
私は何かにもたれてしゃがんでいる。
ここは、、、そうだ、図書館だ。
「涼風さん、、、大丈夫?、、、涼風さん、、、」
私は、、、、呆然としたまま声の主に告げた
「、、、どうしたらいいのか、、、わからなかった、、、」
開いたままの窓から夕焼けがおかしなくらいきれいに見えていた。
私、この景色は好きだ。この図書館も好きだ。
そして相変わらず私に向けられている話し声はどこか懐かしく、少しづつ心に染み入ってくるような気がした。
「居心地の良さ」という感覚を私は少し思い出せているような気がした。



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