15.

そして……

俺の心に浮かんだこと
それは神や人への復讐ではなかった
そんなことをしても、きっと、何にもならない
そんな気がした

復讐なんかより……俺は、アカネのために何かをしたかった…
いや、アカネのために何かをしたという満足感が欲しかった
ただの自己満足なのかもしれない
いや、そうに違いないだろう
でも、俺は………
そんなものにでも、すがりたかった



アカネが死んでから、夢を見るようになった
起きてしまえば大抵のことは忘れていたが、時々、鮮明に頭に残っているときもあった
夢はいつも同じだった
とても悲しい夢だった
1人の少女が幸せに暮らす夢
両親にかわいがられて幸せに暮らす夢
平凡に…暮らす夢

暖かなベッドで目覚め
「おはよう、アカネ」
テーブルを囲み
「おかわりはいいの?アカネ」
花を摘み、木の実を拾い
「いっぱいとれたね、アカネ」
風に吹かれ、駆けまわり
「転ぶなよ、アカネ」
いっしょに眠る
「おやすみ、アカネ」


だけど
とても悲しい夢だった
幸せなはずなのに
その少女は泣いていたんだから
悲しいって泣いていたんだから

少女は泣きながら言う
「おとうさんとおかあさんは、ほんとうはいないんでしょ?」

彼女の世界が暖かなまま凍りつく
(そんなことないよ)
(そんなことないわよ)
(おとうさんだよ)
(おかあさんよ)
(ここにいるよ)
(ここいいるわよ)
(ココニイルヨ)
(ココニイルワヨ)
(ココニ………
(………イルワヨ

(ココ…………
(コ……………………………
(………………ヨ………コ……………ワ……ル…………………
(………………………………ニ……………………………ヨ……………………………

少女は耳をふさぎ
暗闇で一人泣いている

悲しい夢だ

唯一の救いは
その夢に、虎の魔物なんか出てこないことだけだった

そんなやつがいたら
アカネは…
もっと……
泣いてしまうだろうから………



今、アカネが死んでから、数ヶ月が経とうとしている。
俺は、アカネに何かをしてやれただろうか
何かをしたといえるだろうか

アカネ
あれから
俺は
たくさん色を覚えたぜ

おまえの髪の色
おまえが着てた服の色
おまえの髪飾りの色
おまえが採ってきたキノコの色
いくつもいくつも……採ってきたよな…、まったく大変だったぜ、探すのが……

あの日の空の色、雲の色…
俺の顔の毛の色も、この色なんだぜ

それと、おまえがまみれてた血の色、、、
それで俺の家の前はいっぱいになっちまったよ
寝床も、木の実を採った大きな木のところも
アカネ……

お前のために……俺が…
俺ができたのは……たったこれだけのこと


家を出て歩き出す。

こんなにたくさんの色が
この山にはあったんだな
これでいいのか
ここで眠れればかなうのか
おまえの夢は…………



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